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2024年08月20日

少数精鋭のスタートアップに“ペースメーカー”が伴走。内部管理体制を早期に整え、IPOへ導く

2024年1月に新NISA(少額投資非課税制度)がスタートし、関心の高まる個人投資。同年3月、体験型投資学習アプリを開発・運営するグリーンモンスター株式会社 (https://greenmonster.co.jp/、以下、グリーンモンスター)が東証グロース市場に上場した。同社はモバイル総合商社に勤めていた小川亮氏(現:代表取締役)らが中心となり、2013年に設立。インターネット広告代理業を経て、投資学習を支援する現事業を確立した。

その上場準備を支えたのがブリッジコンサルティンググループ(以下、BCG)である。2020年7月から、BCGはグリーンモンスターの内部監査やJ-SOX(内部統制報告制度)対応などを支援。小規模なスタートアップの人的資源と専門知識を補完しながら、内部監査の客観性・継続性を担保した。どのように両社が連携して、内部管理体制の整備・運用を進めたのか? 4名のキーパーソンに取材し、IPOまでの道のりを振り返る。

グリーンモンスター株式会社 取締役CFO / 公認会計士 開原 信一
グリーンモンスター株式会社 取締役CFO / 公認会計士 開原 信一

有限責任あずさ監査法人にて、監査・IPO支援・コンサルティング業務に従事。その後、株式会社ポケラボの経営企画マネージャーとして、予算管理や経営課題の解決、M&Aなどに携わる。ウェルスナビ株式会社では予算管理・資金調達・株主対応・IPO準備を推進。2019年10月の独立を経て、2020年7月にグリーンモンスター株式会社へ参画。同年9月、取締役CFOに就任。同社の内部管理体制の整備・運用を統括し、上場準備の中心的役割を担う。公認会計士。

グリーンモンスター株式会社 管理部 マネージャー 江幡 信隆
グリーンモンスター株式会社 管理部 マネージャー 江幡 信隆

2003年に自動車ディーラーへ入社し、4年間営業を経験。その後は簿記会計を学び、財務経理へキャリアチェンジ。2016年に株式会社ホワイトプラスへ入社し、財務経理や経営管理に従事する。2021年12月、グリーンモンスター株式会社に入社。管理部のマネージャー、および内部監査の担当者に就任。財務経理を中心に、人事・広報業務も統括する。2022年12月、子会社である株式会社 FPコンサルティングの社外取締役に就任(兼務)。

ブリッジコンサルティンググループ株式会社 取締役COO / マネジメント事業本部 本部長 公認会計士 田中 智行
ブリッジコンサルティンググループ株式会社 取締役COO / マネジメント事業本部 本部長 公認会計士 田中 智行

中央青山監査法人、有限責任監査法人トーマツを経て、2012年に独立。2014年10月にブリッジコンサルティンググループ株式会社が運営する「会計士.job」に登録し、2015年4月からパートナー会計士として活動。その活動の中で、散在している会計士人材を集約し有効活用することにより1社でも多くの企業を支援するビジネスモデルに魅力を感じ、同年9月にブリッジコンサルティンググループ株式会社に入社。入社後は上場準備会社及び上場企業のERM、内部監査、J-SOXなどリスクマネジメント領域の支援PJを多数管掌。2023年12月に取締役COOに就任し、現在は事業全体を管掌している。

ブリッジコンサルティンググループ株式会社 パートナー会計士 本田 知行
ブリッジコンサルティンググループ株式会社 パートナー会計士 本田 知行

2007年、有限責任監査法人トーマツに入社。成長企業のIPO監査・アドバイザリーサービスなどに従事。2011年、スタートアップ企業に参画。管理本部長として、管理会計の導入・基幹システムの刷新などに従事。2014年に株式会社トーマツベンチャーサポート株式会社へ参画し、大手企業の新規事業創出を支援。2023年、株式会社FAプロダクツの取締役CFOに就任。グリーンモンスター株式会社の上場支援プロジェクトには、ブリッジコンサルティンググループ株式会社のパートナー会計士として参画し、同社の内部監査とJ-SOX対応の実務を支援する。公認会計士。

INTERVIEW

飛躍のきっかけは、ゲームのように楽しめる投資学習アプリ

グリーンモンスターの源流は、携帯電話向けゲームやコンテンツの制作にある。創業期は投資学習だけでなく、カラコン比較や星占いなど、さまざまなスマホアプリを開発。主力サービスとなる分野を模索していた。

転機は2018年に訪れる。FX(外国為替証拠金取引)初心者向けのデモトレードアプリ「FXなび」をリリースしたところ、大きな反響を呼んだのだ。ゲームのように楽しく投資を学べる点などが評価され、アプリのダウンロード数が増加。会社の業績も伸び続け、IPOをめざすようになった。

同社は2019年から上場準備を開始するも、当時の従業員数は20名未満。経理担当者はいたものの、「管理部」が存在しなかった。そこで翌年に管理部を新設し、マネージャーを採用。管理部の管掌役員として、公認会計士の開原信一氏を迎え入れた。同氏は監査法人で監査やIPO支援などに携わった後、事業会社で上場準備も経験している。

開原氏 「入社当初は2022年6月期の上場をめざしていたので、早期に内部管理体制を整えなければなりませんでした。しかし、管理部は2名だけの急造組織。限られたリソースで時間を短縮するため、アウトソーシングを検討したのです」

委託先としてBCGを選んだ理由は、豊富な実績と高いコストパフォーマンス、そして信頼があったからだ。開原氏は同社の※パートナー会計士として活動していた時期があり、同社と提携するプロフェッショナルたちの高い専門性を把握していた。

※パートナー会計士:BCGと業務委託契約を結んでいる公認会計士等。同社が運営するワーキングプラットフォーム「会計士.job」には4,700名以上のプロフェッショナル人材が登録しており、顧客企業の課題解決に適した公認会計士らが各プロジェクトにアサインされる。

INTERVIEW

人員不足の管理部をBCGが支援。社内規程の改定・レビューも

2020年7月、BCGのプロジェクトマネージャーとパートナー会計士がチームを組成。グリーンモンスターの内部監査とJ-SOX対応の支援を始める。内部監査の担当者には、管理部を管掌する開原氏と事業部のメンバーが就任。相互に他部門を監査することで、自己監査を回避する体制を構築した。

しかし、翌月に重大な事実が判明する。内部監査の前提となる社内規程に複数の不備が見つかったのだ。

開原氏 「驚きましたね。当社は6月決算なのに、3月決算かのような記載が散見されたんです。他にも一部の規程間の整合性が取れておらず、その解決に苦労しました」

開原氏は主幹事証券会社の保有する書類を参照し、自社の実情に即した社内規程を再構築。さらに、一部規程の改定・レビューをBCGに依頼した。購買管理や販売管理など、重要な規程は不整合が絶対に許されないからである。

両社の連携で社内規程の不備を解消した後、別の問題が発生する。管理部の要となるマネージャーが離職してしまったのだ。急いで後任を採用したものの、なかなか定着しない。開原氏や経理担当者が内部監査を兼務するしかなく、人的リソースの不足は明らかだった。

開原氏 「さまざまなことが未完の状態で進むなか、BCGに助けられました。私が忙しくて返事が遅いときも、こちらの意向を察して的確に支援してもらえましたから」

INTERVIEW

前期から積み残された内部監査の指摘事項を次々と改善

支援2期目に入る2021年7月、BCGのチーム体制が強化される。同社の取締役 COO (当時:執行役員) である田中智行氏がプロジェクトマネージャーとなり、パートナー会計士の本田知行氏とともにバトンを受け継いだのだ。

本田氏は監査法人でIPO監査やアドバイザリーサービスに従事した経験をもつ。グリーンモンスターの内部監査においては、前期から積み残された多数の指摘事項を整理し、該当部門の改善指示書を作成。その後のフォローアップ監査を通じて、改善の達成状況を確認した。

当初の目標では、この2022年6月期に上場申請を行うはずだった。しかし、管理部のミドルマネジメント不在を監査法人から指摘される。また、事業成長を支えてきた特定の広告手法が規制され、一時的な減収も予想された。そこで上場延期を決断し、改めて2024年6月期のIPOを目標にする。

開原氏 「結果的に延期は正解でしたね。その間に広告手法を見直し、強固な事業基盤を築けましたから」

上場延期を決めた後、もうひとつの懸案も解決する。優秀な管理部マネージャーの採用に成功し、その後も定着したのだ。事業会社で財務経理・経営管理や内部監査に従事してきた江幡信隆氏である。

2021年12月に同氏が入社し、管理部のマネジメントと財務経理を主導。事業部門の内部監査も経理担当者から引き継いだ。内部監査はBCGの実務支援を受けているため、大きな負担は感じなかったという。その後は小川代表の信頼を得て、人事・広報業務まで任されるようになる。

INTERVIEW

合同の月次会議で進捗を確認。上場準備の重職ゆえの相談も

アウトソーシングには緊密な連携も欠かせない。両社は毎月1回の定例会議を設け、内部監査・J-SOX対応の進捗状況を確認。懸案や相談事項などが生じた場合は時間制限を設けず、十分な協議を行った。

BCG本田氏 「内部監査では発見事項を適時に共有しなければなりません。我々は通常業務と並行しながら定例会議でリズムをつくり、滞りなく上場準備を進めました」

江幡氏 「私は多数の業務を抱えているので、どうしても内部監査の優先順位が落ちるタイミングがあります。そんなときもBCGがペースメーカーのように伴走してくれたので、クオリティが安定しました」

J-SOX対応も円滑に進み、監査法人からの指摘は形式的なものに限られた。また、当時はBCGも東証グロースへの上場準備を進めていた頃。同じ目標に向かう当事者の視点から、開原氏は有用な助言を受けられたという。

開原氏 「上場準備に関して、私と同じレベルで話せる人は社内にいません。だから、当時よく相談していた相手がBCGだったんです。同社の執行役員(当時)を務める田中さんの悩みと、私が抱える悩みは近い。いろいろと教えてもらい、非常にありがたかったですね」

INTERVIEW

管理体制の指摘が少なく、上場審査は事業面のヒアリングに終始

2022年12月、グリーンモンスターは事業領域を拡大する。ファイナンシャルプランニングサービスを提供するFPコンサルティングの全株式を取得したのだ。直前期としては異例のM&Aである。江幡氏は管理部の陣頭指揮をとりながら、FPコンサルティングの社外取締役を兼務。規程整備や会計処理をはじめ、買収後の統合プロセスを主導した。

江幡氏 「当時は連結決算に対応できる人材を採用したり、組織文化を変えたりする必要もありました。そんな慌ただしい状況で内部監査の水準を保てたのは、BCGのおかげですね」

BCG本田氏 「すでに親会社の内部管理体制が整っていたので、直前期でも対応できました。支援内容の質的な変化がなく、量的な増加だけで乗り越えられたのです」

そして2023年7月、ついに申請期を迎える。最後の難所は上場審査。内部管理体制に関しては、驚くほど指摘事項が少なかったという。

開原氏 「証券審査の担当者から『こんなに指摘事項が少ないのは珍しい』と評価してもらえました。次の東証審査では、管理体制に関する指摘はゼロ。ひたすら事業のことばかりを尋ねられましたね」

江幡氏 「困ったのは内部監査の品質が高すぎて、疑われたことくらいです。『あなたが担当しているんですよね?』と。そこはBCGから助言・支援を受けている旨を説明しました」

BCG田中氏 「内部監査やJ-SOX対応はIPOに必須の取り組みですが、割と手がかかります。それらを当社が早い段階からサポートした結果、事業に集中してもらえたのでしょう」

INTERVIEW

アウトソーシングが内部監査の客観性・継続性を担保する

2024年3月、グリーンモンスターは東証グロース市場へIPOを果たす。新NISAの追い風を受け、株式投資デモトレードアプリ「株たす」、資産運用シミュレーションアプリ「トウシカ」を通じた売上が急増。今後はオンライン教育など、投資デビュー後も学べる機会を提供する予定だ。そして「金融教育といえばグリーンモンスター」と真っ先に想起される会社をめざす。

開原氏 「これからも組織は大きくなるので、アウトソーシングは積極的に活用していく方針です。たとえば子会社が増えた場合、“中の人”は厳格な内部監査が難しいかもしれません。でもBCGは親会社を理解している第三者。親子会社間の整合性を含めて、客観的に指摘してくれると期待しています」

内部監査の継続性においても、同氏はアウトソーシングを重視する。仮に内部監査の担当者が離職しても、外部委託先に蓄積されたナレッジを引き継げるからだ。

開原氏 「内部監査の専任者を採用市場で探す場合、それなりの時間とコストが必要です。それと比較すると、特に専門性を求められる分野に関しては、外注のコストパフォーマンスは非常に高いと考えています。引き続き、プロフェッショナルの支援を受けるつもりです」

取材・執筆/高橋 雄輔

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