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2017年10月8日

創業わずか4年でのIPOを実現したGameWith その裏側にあった確実な事業スケールとそれを支えた公認会計士、税理士たちの話

創業から4年で東証マザーズに上場した、株式会社GameWith。 同社の創業者であり代表を務める今泉卓也氏は、実際にIPOを経験した感想として「IPOを実現できたことに嬉しい気持ちはあるが、嬉しさよりも、むしろ、身の引き締まる思いだ。」と語った。

今泉 卓也
株式会社GameWith 代表取締役社長 今泉 卓也

1989年3月生まれ。慶應義塾大学卒業。大学在学中にソーシャルゲーム会社の立ち上げに参画し、取締役CTOに就任。自らもコードを書きながら開発を統括し、2本のゲームタイトルをリリース。2013年6月にGameWithを創業し、代表取締役社長に就任。

あまりに順調と言える、創業からIPOを経た現在までの事業成長の裏側を支えたものは何だったのか。また、管理部門設立というスタートラインからの全てを担ってきた、同社取締役管理部長であり公認会計士でもある東陽亮氏の視点から見た、IPO前後の同社の内部体制の実態とは。経営トップと管理部門トップ、両面から見るIPOのリアルを、創業時からサポートし続けてきた、ブリッジコンサルティンググループの視点も織り交ぜながら紐解いていく。

株式会社GameWith
株式会社GameWith

事業内容:ゲーム情報等の提供を行うメディア事業
設立:2013月6月3日
上場市場:東証マザーズ(2017年6月30日 上場)
リリースから3年で月間9億PVを超えたサービスサイトは、日本のスマートフォンユーザーの半数以上が利用するまでに成長。 今後は、攻略メディア事業で培ったノウハウとユーザー基盤を活かし、”次”を担う新サービスを展開することで、さらなる飛躍を狙っている。

INTERVIEW

想像を超えるスピードと着実な成長で実現した、IPO。

2017年6月30日、株式会社GameWithは、創業から4年で東証マザーズへ上場した。ゲームに関する知識が蓄積していくサービスになるだろうという仮説のもと、ゲーム専門のQ&Aサイト『GameWith』からサービスをスタート。創業3か月後にサービスリリースして以降、順調にPV数は増加し、月間2,000万PVに届くまでのサイトへと成長した。このまま成長が続く…と思いきや、一転、PV数増加に陰りが見え始める。

今泉氏 僕自身、ゲームが好きで色々なサイトを見るのですが、Q&Aサービスは不確かな情報もあるし、同じ質問が繰り返されたりもする。あらためてユーザー目線に立つと、シンプルに、正しい情報が欲しいと思うようになりました。

今泉氏はサービスの提供側であるものの、自身がゲーム好きというユーザー側の視点も持ち合わせている。 ユーザー視点から発想を得て、Q&A形式のサイトから、ゲームの攻略記事を掲載するサイトへとサービス変更を決定。攻略サイトへのサービス変更後、約1か月で再び成長曲線を描き始めることになった。

そして、GameWithのリリースから約1年が経った2014年9月、ついに月間1億PVに到達。その後、毎月1億PVずつ増えていくという、驚異的な成長が始まる。今泉氏が、「自分でも驚いた」と言うだけあり、当初の想定の数倍となる月間6億PVまで伸びる、嬉しい誤算となった。

そして、GameWith社には創業当初からVC(ベンチャーキャピタル)が入っており、2年経った頃には「本格的に上場準備を始めましょう」という声が上がり始めていた。 一方で組織の実態はというと、従業員はアルバイトを含めて50名ほどいるものの、管理部門は存在していない。上場準備をするにしても、一体何から手をつけていいのかも分からない状態でもあった。実際、経理業務ですらも、ブリッジコンサルティンググループのサポートを受けながら、今泉氏自らが担っていた。

創業当初からGameWith社をサポートしてきた、ブリッジコンサルティンググループ代表の公認会計士の宮崎良一氏はこう語ってく

BCG宮崎氏 正直なところ、GameWith社がここまで急成長したことに関しては驚いています。ただ、今振り返ってみると、急成長したことは偶然ではなく必然であったと思っています。私自身は、今泉さんのことを、今泉さんの前職時代からよく知っていて、かれこれ6年近いの付き合いになります。経営をしていく中では、難しいことや厳しいこと、都合の悪いことが沢山起きますが、今泉さんは、昔から、その現実をきちんと受け止め、冷静に対処しており、辛いことでも正面から受け止められる人間としての器がある人でした。そういった姿に、私はもちろんのこと、多くの利害関係者の方々から期待されていましたし、今回のIPOやこれまでの事業の成長を見ても、やはり、人間としての器が大きく、かつ、周りから期待されるというのは経営者として必要な要件だと改めて感じました。

株式会社BridgeConsulting 代表取締役CEO 公認会計士 宮崎 良一

今泉氏の返答は、特になかったというものだった。そしてその理由は、計画通りに事業が成長したことにあった。事実、同社は創業からの4年間で、幸いにも事業が大きく伸び悩んだ時期があまりない。事業が順調にスケールしたことにより、外部からの余計なプレッシャーがなかったことは、容易に推測される。

ただ、「VCから資金調達をしている以上、いつかイグジットが必要になるので、そのタイミングは意識するようになった」とも語ってくれた。

また、一人で会社運営ができる規模をはるかに超えて、多くの人がかかわってくれるようになったことから、積極的に権限移譲していかなければと感じ始めた頃でもあったそうだ。

今泉氏 もともと稟議フローを導入するという話になった時は、効率が悪くなるのではないかとネガティブでした。しかし、実際に権限を移譲する体制を作っていく過程で、内部統制の重要性を理解することができました。

と新たな気づきもあったという。

INTERVIEW

IPO準備に向けて優秀な経験者を採用できた理由。

GameWith社が、順調なIPO準備を進めることができたのは、果たして事業のスケールに成功したからだけだろうか。IPO準備に不可欠となる、優秀な人材の採用に成功したことも、大きな要因であると言える。

IPOを2回も経験している人材、監査法人と上場企業両方での経験がある会計士。彼らを採用できたのはなぜか?採用の秘訣はあるのか?という質問を今泉氏にぶつけた。

今泉氏 正直に言って、秘訣のようなものはないです。そもそもIPO準備はどういったものか、どういった人材が必要なのか、当時はイメージできていなかったので、一緒に働きたいかどうかという点を重視して面接を行いました。一方で、こちらが面接をするだけではなく、面接に来るIPO経験者の人たちは、みな本当にIPOができる会社なのかどうかを見ていると感じていました。業績はもちろんのこと、事業ドメインを見ていて、当社の事業ドメインは面白いと感じて貰えたのかなと思います。

宮崎氏から見ると、GameWith社に入社した人たちはみな、『人間性がいい』のだそうだ。しかも、同社の取締役管理部長である公認会計士・東陽亮氏は、偶然にも宮崎氏の監査法人時代の同期でもある。「東さんは、実力があることはもちろん、何より人柄がいい。彼がGameWith社に参画すると聞いたときは、驚くと同時に良い採用ができているのだと安心しました」と語ってくれた。

IPOに対して、変に身構えることもなく、自然体でクリアしてきた印象が強い今泉氏。IPOを果たした後も、特別な変化はないように見える。それは、「これからだ」という気持ちの方が強いからなのかもしれない。対外的に約束した売上や利益を必ず達成していかなければいけないという現実を、力みすぎることなく、フラットに受け止めているようだ。

今泉氏 これまでやってきたことがひとつの形になったという意味で、IPOできたことに嬉しい気持ちはあります。ただ、IPOはひとつの通過点で、我々にとってはゴールではなく、むしろ、今後の成長に向けて、より気を引き締めていかなければと感じています。

INTERVIEW

GameWith社のIPO準備メンバー、「公認会計士」と「2回のIPO経験者」

GameWith社の取締役管理部長である東(あずま)氏は、公認会計士でもある。

東 陽亮
株式会社GameWith 取締役管理部長・公認会計士 東 陽亮

2006年、公認会計士試験合格。監査法人トーマツに入所し、トータルサービス部にて法定監査、内部統制監査、IPO支援などに従事。その後、株式会社サイバーエージェントに転職し、単体決算、連結決算、開示業務と一連の経理業務等に従事。サイバーエージェント退職後、フリーコンサルタントとして上場会社の決算支援や上場準備会社のIPO関連業務などに従事した後、2015年の夏、GameWith社へ参画。

2015年、事業が順調に成長する中で、内部管理体制を整えることをメインミッションとして、東氏は、GameWith社へ参画した。
当時、経理業務はブリッジコンサルティンググループに委託しており、同社の公認会計士が週2~3日ほど常駐して経理業務を代行している状況であった。そこに公認会計士である東氏と、過去に2社でのIPO準備経験を有する伊藤氏(現・経営企画室長)が加わり、自社で決算を行うための体制整備を始めるというところからスタートした。

「公認会計士であり会計まわりに強い私、そして、証券会社対応などIPO準備における会計以外の部分の経験が豊富な伊藤との得意分野がうまく噛み合ったのは大きかったと思います」と東氏は振り返る。

また、その後、経理メンバーをもう1名増員するタイミングで、ブリッジコンサルティンググループからのサポートで常駐していた公認会計士が「GameWithで働きたい」と転籍を申し出てくれたことも大きな戦力アップへとつながったという。

税理士法人Bridge東京 所長・税理士 黒田 悠介

こういった黒田氏の「特別なサポートをしていない」とのコメントに対して、東氏は「ブリッジさんは、IPOに関するクライアントのニーズを的確に把握してサポートしてくれた」という。

黒田氏 例えば、IPO準備の時から四半期での税額計算をブリッジさんにお願いしていたのですが、一般的にはかなり厳しいと思われるスケジュールでもさらりと対応してくれました。大手の会計事務所だと難しいと断られるであろう依頼に対して、さも普通のことであるかのように苦労を見せず最速のスピードで対応してくれる、そういったブリッジさんのスタンスが頼もしかったです。

社長は事業のスケールアップに、管理部問は内部体制の構築に集中することで実現した、IPO。

IPO準備を進めるに当たって、根強い過去慣習や、社内の利害関係の調整など、内部体制を構築していく上での問題は事欠かない。しかし東氏は、GameWith社には大きな問題はなかったと言う。

社歴が浅い分、IPOに向けて障害となるような既存の仕組みや慣例等がなかったことは大きな要因だったそうだ。また、21時にはオフィスから人が消えていることからも、労務面でも『健全な』ベンチャーだったことがうかがえる。

今泉氏 準備開始から上場まで業務をスムーズに行うことができ、結果として2年で上場することが出来ました。もちろん、申請書類の作成等通常の苦労はありましたが、特別に大きな難題がなかったのはやりやすかったですね。

今泉氏も、事業をスケールさせることに専念できたと語っていたように、GameWith社のIPOは、明確な役割分担により順調に進んだように見える。

東氏 社長が、私たちにすべて任せてくれていたので、とてもやりやすかったですし、それが本当にありがたかったですね。
IPOを目指すとなると、証券会社や監査法人などたくさんの人達が関わってきて、中には社長への挨拶の依頼や、社長が必ずしも参加しなくてもよいミーティングなどもたくさんあるのですが、そこは私と伊藤でとことん精査して、社長に割いてもらう時間は最小限に抑えました。

東氏 社長が私たちにIPO準備をすべて任せてくれているのと同じく、私たちとしても、社長には事業をスケールさせることに没頭してもらいたいという気持ちでした。

と、東氏は語った。GameWith社の採用成功の秘訣を探るべく、東氏になぜGameWith社に入社したのかを聞いたところ、

東氏 『ゲームをより楽しめる世界を創る』という世界観に共感したから。

という返答が返ってきた。

スポーツに没頭することは賞賛される。野球少年はイチローに憧れ、サッカー少年は本田圭佑に憧れる。でも、ゲームという存在は賞賛される対象ではない。ゲーム界にイチローのような存在が出現したら面白い。という、同社が実現したい独自の世界観。それから「社長の今泉に惹かれたことです」とも付け加えられた。東氏から見た今泉氏は、年齢関係なく、クレバーで冷静な人だった。今泉氏であれば、語っている世界を実現できると感じたのだそうだ。

東氏 創業2年目のベンチャーならば、一番の判断材料は社長の人柄です。

INTERVIEW

事業部だけでなくバックオフィスも、競合たちと戦っていく。

東氏のキャリアは、監査法人の後にIT系上場企業での経験を積み、IPO準備に携わり上場を実現、というある意味で綺麗なストーリーがある。監査法人は、様々なクライアントを担当できる面白さがある一方で、東氏の前職である株式会社サイバーエージェントは、特別な面白さがあっただろう。勝ち続けている企業の第一線ではどんな経験を得たのだろうか。

東氏 決算早期化等の業務改善に挑戦しましたが、やりがいはありましたね。レベルの高い人たちがたくさんいる環境でしたので、監査法人での経験しかない自分は苦労もたくさんしました。ただ、サイバーエージェント時代には子会社の会計をいくつも見ていたのですが、GameWithは、サイバーエージェント社の子会社のひとつほどの規模、そう考えれば、初めてのIPO準備でもやりきれる自信がわきました。事業会社での最初のキャリアでストレッチできたことは、自分にとっても大きな出来事だったと思います。

こういった経験から、私と同じ公認会計士の人たちも、もっと事業会社に来て欲しいとも感じています。監査法人で頑張るのももちろん良い選択ですが、そこで培った専門知識をベースにできることは監査法人の外にもたくさんあります。外に出るのは不安かもしれないが、とりあえず飛び込めば大丈夫。飛び込んでしまえばやらざるを得ないが、それはそれで楽しい。“とりあえずやってみよう”と言いたいですね。

最後に、IPOを経てのこれからについて聞くと、東氏には明確な思いがあった。

東氏 ルーティンを最大限にシステム化して、浮いた時間をすべて事業部に貢献するために使いたいですね。その貢献度が、管理部門のパフォーマンスですから。上場したということは、当社が名だたるメガベンチャーと戦うフィールドに立ったということだと捉えています。それは事業部門だけではなくて、バックオフィスもそういったトップクラスの上場ベンチャーと戦わなければならないということ。一人ひとりがスケールアップすることはもちろん、バックオフィス全体としても、テクノロジーを活用した効率化、専門性の高い人材の育成を行うなど、今後も挑戦していき、事業部の成長を止めないよう支援していきたいです。

創業から4年、準備開始から2年という期間にて、あまりに自然に実現されたGameWith社の東証マザーズへの上場。しかし、ユーザー視点に立ち徹底的に事業をスケールさせた今泉氏、権限移譲という信頼の下、内部体制の構築に集中した東氏をはじめとしたプロフェッショナルたち。そして、創業以前から、成長のフェーズに応じて支援をしてきたブリッジコンサルティンググループ。

すべての立場の思いと、プロフェッショナルスキルが交差することでしか成し得なかった、特別なIPOだと言えるかもしれない。

今泉氏 IPOを実現できたことに嬉しい気持ちはあるが、嬉しさよりも、むしろ、身の引き締まる思いだ。

東氏 上場したということは、バックオフィスもトップクラスの上場ベンチャーたちと戦わなければならないということ。

そして、この大きな成果に奢ることなく、彼らは既に次の戦いを見据えている。

また、当社は元々親会社事業の1サービスからのスピンオフという形で設立をしたので、親会社からの独立をして他の株主探しをするという点でも苦労しました。
ただ、その点も入社してくれた管理部長のおかげで、資金調達業務もうまくまわるようになり、売上も安定して伸びてくるようになりました。

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