すかいらーくのIFRS上場はどう実現されたのか? ~すかいらーくのIPOを支えた公認会計士たちの話~
2014年10月9日、 株式会社すかいらーく(以下、すかいらーく) が東証一部への新規株式公開(IPO)を果たした。このすかいらーくのIPOは、MBOによって非上場化した有名外食チェーンの再上場として、そして、日本初のIFRS(国際財務報告基準)での上場として注目を集めた。
しかし、前例のないIFRSでの上場であったがゆえに、そこには数々の課題があったという。今回の特集では、このすかいらーくのIFRS上場の裏側とそれを支えた公認会計士たちにフォーカスする。
準備期間はわずか1年だった!すかいらーくのIPOスケジュール
わずか1年で日本初のIFRS上場を実現
すかいらーくのIPOは驚くことに本格的な準備開始からわずか1年で実現されている。すかいらーく自身はかつて上場企業であったが、その後の非上場期間も長く、IFRSでの上場を目指すにあたっても1年という期間はとても十分と言える長さではなかった。
そのすかいらーくのIPOは下記のようなスケジュールで進められた。2013年9月にIFRSでのIPO準備が決定され、そこから1年後には上場が承認されるというスピーディーな展開である。
すかいらーくのIPOスケジュール
- 2013年7月
- キックオフミーティング(IPO準備のスタート)
- 2013年9月
- IFRSでの上場を目指すことが正式に決定
- 2013年12月
- 本決算
- 2014年6月
- 中間決算(IPOの申請期)
- 2014年8月
- 東京証券取引所からの上場承認
- 2014年10月
- 東京証券取引所市場第一部へ上場
なぜIFRS上場だったのか?当初はUSGAAPかIFRSでのIPOを検討
すかいらーくはなぜIFRSでのIPOを選んだのであろうか?実は、すかいらーくがIPOを目指すにあたっては、IFRSだけではなく、USGAAP(米国会計基準)でのIPOも検討されていたという。
同社では、かねてよりIR戦略において、グローバルオファリング(海外の投資家からの資金調達)を意識していたため、海外投資家への訴求力があるIFRSかUSGAAPでのIPOを検討していたのだ。
当時はIFRSの任意適用を使ってのIPOは東証でも検討段階であったため、東証や財務局の意見を聞きながら慎重に検討を進めていたが、折しも同社がIPO準備を本格スタートしたタイミングで、IFRSでの上場が制度的に認められることとなりIFRSにてIPOを目指すこととなった。
すかいらーくの組織とメンバー、IPO関係者たち
次にすかいらーくのIPOに関わったメンバーを見てみよう。すかいらーくのIPO準備は、財務経理業務を担当する財務本部と、広報・IR・経営企画などを担当するCEOオフィス内にIPO準備事務局を設置し、その2部門によって主導された。
また、会計監査人は有限責任監査法人トーマツ、主幹事証券は野村證券といずれもIPOマーケットでトップシェアを有する2社となっている。
すかいらーくのIPO関連部門(当時)
- ・財務本部(約30名)
- ・財務経理グループ
- ・財務チーム
- ・経理チーム
- ・CEOオフィス
- ・経営企画、広報、IR等
- ・IPO準備事務局(3名)
IPO関係者
- 会計監査人
- 有限責任監査法人トーマツ
- 主幹事証券
- 野村證券
今回、すかいらーくのIPO準備を会計面から主導した財務経理グループ・ディレクターの勅使河原氏と企画管理チーム・リーダーの二ノ宮氏に話を伺った。
大手通信会社での米国法人CFO、連結会計等の経験を経て2013年すかいらーく入社。財務本部、財務経理グループ・ディレクターとして、決算、開示、グループ会社連結等の業務を統括。
2009年すかいらーく入社。財務本部、財務経理グループ・企画管理チームリーダーとして、決算・開示、子会社決算シェアード等の業務を統轄
IPOに向けた大きな懸念:人材リソース・開示ノウハウの不足
すかいらーくは同社のIFRS上場プロジェクトを「IFRS」と「IPO」のふたつに分けて進行させて行った。財務経理本部ディレクターの勅使河原氏は、IFRSでの上場を目指すにあたっての懸念事項は人材リソースとIFRS開示へのノウハウだったという。
ご存知の通り、すかいらーくは2006年8月にMBOによって非上場化されていることから、上場企業としての開示は行ってはいない。
すかいらーくの上場の歴史
- 1962年4月
- ことぶき食品有限会社として設立
- 1978年7月
- 日本証券業協会に店頭登録銘柄として上場
- 1982年8月
- 東証二部に株式上場
- 1984年6月
- 東証一部に指定替え
- 2006年9月
- 非公開化(東証一部・上場廃止)
- 2011年11月
- 外資系投資ファンドに株主変更
当時、すかいらーくの財務本部とIPO準備事務局には合わせて30名以上の人材が所属しており、開示に精通したメンバーとIPO準備経験者がそれぞれ1名ずつ在籍していたものの、ノウハウ、人材の絶対数ともにとても足りない状況であった。
IPOのための会計アドバイザーを起用
そこで、上記のような課題を背景に、すかいらーくでは、監査法人や主幹事証券会社とは別に会計アドバイザーと契約しプロジェクトを進めることとした。大手会計ファームのKPMG(あずさ監査法人)とIPO支援を強みとする独立系ファームのBridgeグループの2社である。
すかいらーくの会計アドバイザー
- ・KPMG(あずさ監査法人)
- ・Bridgeグループ
前例のないIFRS上場という課題に関して、監査法人や証券会社、そして、会計アドバイザーたちはそれぞれどのようなスタンスでサポートしてくれたのだろうか?二ノ宮氏によると、下記のような特徴があったという。
【監査法人トーマツ】
まず、会計監査人として、BIG4のひとつである監査法人トーマツと契約した。監査法人トーマツは、大手監査法人の中でもIPO準備企業の監査経験も豊富であり、また、デロイトトーマツというグローバルネットワークに所属していることもあり、大企業や海外基準の監査実績も豊富だ。一方で、あくまで「監査人」という立場であるため、トーマツとしては独立性の問題から一線を引く必要もあり、各論点に関してはすかいらーく側が吟味して結論を持っていき、トーマツの見解をもらうという関わり方であった。
【野村證券】
主幹事である野村證券には、財務諸表作成以外の数値や労務面などを相談し、アドバイスをもらうことが多かったという。特に開示に関してはその情報は投資家に対してどうあるべきかという視点からアドバイスを受けることが多く、IFRSという形式だけにとらわれすぎず、「投資家への開示」というIPOの本分からぶれずに作業を進めていくことに大きく役だったという。一方で、すかいらーくとしては、自社内で不足しているIFRSベースでの財務諸表作成や開示に関するノウハウを補いたいと考え、まずはKPMGに対して会計面の支援を依頼したという。
【KPMG(あずさ監査法人)】
IFRS上場を進めるにあたっては、プロジェクトを「IPO」と「IFRS」のふたつに分類し進行していったすかいらーくだが、IFRSのブレインとしてのサポートをKPMGに依頼したという。それにより、2013年9月から2014年の前半にかけてIFRSでの会計ポリシーや財務諸表作成における主だった論点の検討を進めていった。
見え始めるリソース・ノウハウ不足
このタイミングで、すかいらーく側の人材リソースやノウハウがどれくらい不足しているかも見え始めた。
同社は「2013年12月期」と「2014年12月期」の2期分の決算をもとにIPOを申請する予定だったが、2013年12月期の期首データを用意するために実質は2012年12月期から3期分の財務諸表をIFRSベースで用意しなければならなかった。これを日々の日次、月次決算と並行して行っていかなければならない。
また、前例のないIFRSでのIPOのため、参考資料がないなどリサーチやディスカッションにもリソースが割かれることが予想された。
そこで、同社は現場でのブレインとしての機能とプレーヤーとしての機能(人材リソース)の双方を提供してくれるBridgeグループにサポートを依頼することとなった。
【Bridgeグループ】
Bridgeグループからは、公認会計士1名(後に2名)が出向し、IFRSでの開示や子会社決算の支援を行った。IFRSベースの財務諸表を作成するための基礎資料及び情報の収集やこれらプロセスの整備、現場で生じる数々の各論への対応や実務のサポートを同社の公認会計士が機動的にサポートしたのだ。
このBridgeグループの支援を受けながら、すかいらーくのIPOプロジェクトは佳境へと突入していく。
なぜKPMGとBridgeグループふたつのアドバイザーを起用したのか
ディレクターの勅使河原氏によると、KPMGとBridgeグループという2社の会計アドバイザーを目的に応じて使い分けることができたのもプロジェクトの成功要因のひとつであったという。
IFRSベースの会計ポリシーの策定という高度な会計ノウハウと慎重な経営判断が必要な作業に関しては、世界的会計ファームであり、かつ、BIG4ファームの中でも特にIFRSの支援実績が豊富なKPMGを起用し、信頼性を高めた。
一方で、策定された会計ポリシーをもとに短期間でIFRSベースの決算・開示作業を進めていくには、現場レベルで生じる各論をスピーディーかつ正確に処理していく必要があったが、派遣会社や並のアウトソーサーでは対応ができない。また、予算の制限もあるため、高額な大手ファームから存分にサポートを受けるというわけにもいかなかった。
そこで、高いコストパフォーマンスと会計プロフェッショナルとしての知見を兼ね備えたBridgeグループを起用することによって不足する人的リソースとノウハウを的確に補ったのである。財務経理グループ・ディレクターの勅使河原氏は語る。
「期限の迫るIPO準備においては、ひとつのミスが後々の大きな問題へとつながることもあり得る。Bridgeの会計士が我々と伴走し、実務面をサポートしてくれたことは大きな安心感へとつながった。」
すかいらーくのIPO支援プロジェクトはどう進められたのか?
すかいらーくのIPOを支えた公認会計士たち
このように外部アドバイザーの力も借りながら進められた同社のIPO準備だが、アドバイザー側はどのように見ていたのであろうか?BridgeグループCOOとしてすかいらーくのIPO支援プロジェクトをマネジメントした公認会計士・大庭崇彦氏に話を聞いた。
Bridgeグループは、大手監査法人出身の若手公認会計士たちによって起ち上げられたコンサルティングファームだ。IPO準備や管理部門の構築支援を強みとし、前回の記事でも紹介した築地・銀だこを運営するホットランド社のIPOも支援するなど近年、急速に実績を上げている。
今回のプロジェクトは、IPO準備が佳境となる2014年5月からスタートし、大庭氏がプロジェクトマネージャーとなり、その下に佐々木氏と野口氏というふたりの若手会計士がアサインされた。
2006年、公認会計士2次試験合格。有限責任監査法人トーマツ・トータルサービス1部を経て、2011年10月Bridgeグループ参画。株式会社Bridge、代表取締役COO就任。
2002年、公認会計士試験合格。有限責任あずさ監査法人・金融事業部を経て、2014年にBridgeグループへ参画。
2002年、公認会計士試験合格。有限責任あずさ監査法人・金融事業部を経て、2014年にBridgeグループへ参画。
すかいらーく社・IPO支援プロジェクトの概要
Bridgeグループによる『すかいらーく社・IPO支援プロジェクト』のスケジュールと各メンバーの役割分担は以下の通りだ。
2014年5月~8月:IPO直前
大庭氏:プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネジメントを担当、CFO、ディレクターとの定例ミーティング(隔週)をハンドリング、定例ミーティングの内容、佐々木氏の報告をもとにどこにリソースが足りないのか、IFRS開示と子会社決算に分けて課題を抽出
佐々木氏
週5日ですかいらーくに常駐、子会社決算、IFRSベースでの申請書類作成を実行支援しながら、課題を抽出
2014年8月~9月:IPO申請&IPO
大庭氏:プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネジメントを担当。CFO、ディレクターとの定例ミーティング(隔週)を現場レベルで検出された課題・改善提案の報告、現場業務のフォロー・品質管理及びチェック
佐々木氏
週2日すかいらーくに常駐、子会社の経理体制の見直し、より合理的な経理体制の構築。
野口氏
週2日すかいらーくに常駐、IFRS開示書類作成を実行支援しながら、課題抽出
2014年10月~:上場後の開示サポート
大庭氏:プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネジメントを担当、すかいらーくへの毎週のレポーティング、改善提案
佐々木氏
週2日すかいらーくに常駐、子会社決算支援
野口氏
週2日すかいらーくに常駐、開示書類作成支援
理論を実務に落とせる公認会計士が支援することが重要
大庭氏によると、Bridgeグループでは普段から、理論やあるべき考え方を抽象論にとどまらず、実務及び各論にまで個別具体的に落とし込んで主体的に動ける会計士をアサインすることを意識しているという。
現場に入り込む同社の支援スタイルにおいては、課題の抽出や改善方法を語るだけはクライアントに貢献することはできない。特に、今回のケースでは、IFRSの総論に関するアドバイザーはKPMGが担い、Bridgeグループには、現場実務に関する細かいサポートや各論への実務対応が期待されていた。
そのため、大庭氏は、現場で生じる課題ひとつひとつに丁寧に向き合え、かつクライアントの結果に対してコミット出来るメンバーをアサインすることを意識したという。
まずはリソースの確保が急務であった:プロジェクトマネジメントのポイント
すかいらーくからの依頼を受けた際、「確かにスケジュールは厳しいが、弊社側で抱える実務レベルでサポート出来る会計士を1人/月、または、2人/月確保すれば、越えられない山ではない。」というのが大庭氏の第一印象であったという。
というのは、1名ずつではあるものの、すかいらーくには開示やIPO経験者がいた。また、マネジメント能力のある人材も在籍されており組織力も感じられた。そのため、プロジェクトの初期段階より「Bridge側とすかいらーく側でいかに業務を分担し、リソースを効率よく配分していくか」を意識し、プロジェクトに臨んだという。
IFRSを通じて海外市場とケーキに詳しくなった!?細部まで切り込むBridgeのサポート
すかいらーくに常駐してIFRS上場を支援した公認会計士たちからは同社の現場はどう見えたのであろうか?同社の支援プロジェクトに携わった佐々木氏と野口氏にとっても今回のプロジェクトは貴重な経験になったという。
「今回のプロジェクトではケーキに関する知識が深まりました。」
と佐々木氏は冗談めかして語ってくれた。ケーキの製造販売を行う子会社の決算業務支援通じて、ケーキの原材料名や価格に関して詳しくなったのだという。
佐々木氏 「IFRSというと世間ではJGAAPとの差異や財務諸表へのインパクトなど“総論”のイメージが強いですが、実はIFRSベースでの開示を行うためには裏で非常に多くの作業を行わなければなりません。親会社がIFRSの開示を行うためには子会社の数値を正確に拾い上げていく必要があり、子会社の経理体制から見直す必要があるのです。
今回、主要な子会社が決算を組んでいく上での課題の抽出や、それをもとにした決算プロセスの見直しを担当しましたが、IFRS導入にあたって子会社の会計を個別・具体的にとても詳しく見ることが求められ、非常に細かい作業となりました。
とても大変なプロジェクトでしたが、ここまでの各論や現場実務に触れることができたのは会計士としても貴重な経験でした。」
また、上場後のIFRS開示の支援にも携わる野口氏も、IFRS導入国の事例に関するリサーチといったユニークな経験を積めたという。
野口氏 「東証で初めてのIFRS上場ということで、できるだけ多くの情報を集め、あらゆるケースに対応しようと心がけました。その過程で海外市場制度に関してもリサーチを行ったのですが、これが意外と興味深い作業でした。
同じIFRS適用国といっても、証券市場の制度によって開示スタンスや内容も変わります。例えば、日本の短信にあたる制度があるかどうかでも異なります。 こういった各国の制度なども参考にしながら“日本での開示はこうなるのではないか”“こういったスタンスで開示すべきではないか”と現場での議論を深めながら作業を進めていきました。」
すかいらーくのディレクター・勅使河原氏も、現場に入り込みクライアントと一体となってサポートするBridgeグループのこういったスタンスを高く評価する。
勅使河原氏 「現場をサポートしてくれるファームを選ぶに当たっては、専門性はもちろん、すかいらーくサイドに立って一緒に課題にタックルしてくれる姿勢やフットワークを求めていた。Bridgeグループはまさにこの期待に応えてくれた。」
関係者が語る、IFRS上場の論点と成功のポイントとは?~固定資産の減損、販管費注記など~
IFRS上場の主な論点はどこだったのか?~固定資産の減損、販管費注記など複数の論点~
最後にすかいらーくのIFRS上場において主な論点となった部分を見ていこう。企画管理チーム・リーダー、二ノ宮氏に話を伺った。
同社のIFRS対応において、主だった論点は4つあったという。
- 1. 固定資産の減損方法
- 2. 注記をどこまで記載するか
- 3. 会社法計算書類をどう開示するか
- 4. 子会社決算プロセスの見直し
1.固定資産の減損方法
IFRSの適用では、一般的にのれんの影響が注目されがちだが、飲食業として多店舗展開しているすかいらーくでは、固定資産の減損も決算上のインパクトが大きく重要な論点となった。
固定資産の減損は、JGAAPにおいても支店・店舗単位で細かく行われるが、IFRSでは基準が異なり、かつ、主要なグループ会社全体にも及ぶ。子会社において多業態の飲食店を出店している同社では、それぞれの子会社で論点を整理して数字を調整していく作業が生じるため、固定資産の減損は決算作業の終盤にまで及ぶ負担の大きい作業になったという。
2.注記をどこまで記載するか
IFRSとJGAAP(日本基準)の大きな違いに開示範囲があるが、IFRSでの開示基準を作る上でどこまで開示していくかはすかいらーくにおいても懸案事項のひとつとなったという。
特に販管費注記に関しては、投資家に対する開示情報として細かくあるべきな一方で、オーバーディスクロージャーとならないようにどこを落とし所とするか議論を重ねたという。
3.会社法計算書類をどう開示するか
会社法計算書類の開示に関しても論点となった。IFRSでは、計算書類に関して金商法と会社法の重複部分などで簡素化が図られるが、開示事例がないことから検討にはかなり時間を要したという。
また、IFRSの開示範囲がどこまでになるかも法律が調整中であったため、直前で法律が変わり、予定していた部分の開示を大きく削った部分もあったという。
4.子会社決算プロセスの見直し
子会社経理を担当した佐々木氏(Bridgeグループ)が前述した通り、IFRSで開示を行うということは、各子会社から必要な数字を吸い上げる必要があり、そのための子会社決算プロセスをひとつひとつ見直していく必要があった。
各子会社においてIFRSの論点が該当するのか、するのならどう変わるのかを検討し、それをもとにプロセスを改善しなければならない。また、その過程においては、親会社のみならず子会社の経理スタッフにもIFRSへの理解を深めてもらうことが必要である。
「特に海外子会社への導入に苦労しました。当社の場合は、1社のみでしたが、海外子会社が多い企業の場合、その負担はかなり大きいと思われるので、特に注意すべき点ではないでしょうか。」と二ノ宮氏は語る。
同社では当初は子会社から受け取った数字を親会社でIFRSに組み替えるというフローでスタートしたが、今後は子会社自身がIFRSベースでの数字を出せる体制を構築していく予定だという。
プロジェクト成功のポイントは?アウトソーサーも受け入れるチーム力と組織の温かさ
Bridgeグループの大庭氏は、すかいらーくのIFRS上場プロジェクトが約1年という短期間にも関わらず成し遂げられたのは、限られた人材リソースを的確に活用できた点にあったと分析する。
「当社も数々の企業のIPO準備や開示業務を支援していますが、すかいらーく社では二ノ宮氏が旗振り役となり、当社へアウトソースすべき業務を的確に判断してくれました。
アウトソーシングの現場では、様々な業務が出てきますが、各業務を“自社メンバー”と“アウトソーサー”のいずれで担うのが効率的かを的確に判断していくことによって、その効率が大きく変わります。
我々アウトソーサー側は、そこをどこにするかをクライアントと相談しながらプロジェクトを進めていくのですが、今回のケースでは、二ノ宮氏に会計の知見があり、“公認会計士に任せると効率が良い業務は何か”を理解した上でコミュニケーションをとってくださいました。これにより当社もすかいらーくと一体感を感じながら作業を進めることができ、普段以上に力を発揮することができたと思っています。」
一方で、勅使河原氏と二ノ宮氏はBridgeグループに対して以下のように語ってくれた。
二ノ宮氏 「Bridgeグループのメンバーがいてくれた安心感は本当に大きかった。佳境時には詳細な指示を出す余裕もなく、佐々木さんや野口さんに業務を丸投げしたこともあったが、それに対しても的確に応えてくれた。膨大な作業をこなす中で不安なく子会社決算や開示書類の作成を終えられたのは彼らを始めとした外部の方々のおかげだと思っています。」
勅使河原氏 「我々がアウトソーサーに求めるのは、会計の専門家としての知見を活かして、我々よりももう一段深く考えたアドバイスを行ってくれること。クライアントである我々よりもさらに真摯に課題に向き合って支援してくれる、そういった姿勢で取り組んでくれる会計士を求めていた。Bridgeの会計士たちはまさにそれを実践してくれた。」
そして、今回のプロジェクトに関わったメンバーたちが口を揃えたのが「良い雰囲気の中で仕事ができた」ということだ。佐々木氏と野口氏の言葉が印象に残っている。
「我々がアウトソーサーに求めるのは、会計の専門家としての知見を活かして、我々よりももう一段深く考えたアドバイスを行ってくれること。クライアントである我々よりもさらに真摯に課題に向き合って支援してくれる、そういった姿勢で取り組んでくれる会計士を求めていた。Bridgeの会計士たちはまさにそれを実践してくれた。」
わずか1年という時間の中で成し遂げられたすかいらーくのIFRS上場。この温かさとチームワークこそがプロジェクトを成功に導いた真の要因だったのかもしれない。
BridgeグループによるIPO支援プロジェクトは、その後、開示支援プロジェクトとして継続され、現在もすかいらーくの適正な開示をサポートしている。
すかいらーくを支える彼らのプロジェクトは今日も続いている。
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