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2020年8月7日

地方発ベンチャーの”ネクストチャレンジ”。社外CFOのサポートを受け、戦略的な資本政策を立案

人口減少や法改正の影響によって、競争が激化する保険代理店業界。その中で1990年の設立以来、30期に渡って黒字を続けている地方発ベンチャーがある。法人向け保険コンサルティングを主業とする 株式会社ビジコンネクスト だ。同社は保険商品の活用を通じて、未上場企業の事業承継対策や福利厚生施策などを支援。2011年には創業地の茨城から東京に本社機能を移し、事業成長を加速させている。

そして2020年4月、同社はさらなる成長拡大をめざして、資金調達手段の多様化を計画。中長期的な資本政策を整備するために、ブリッジコンサルティンググループ(以下、BCG)の‟社外CFO”に支援を依頼した。すると、1ヵ月足らずで戦略的かつ緻密な資本政策が完成したという。その要諦はどこにあるのだろうか?オーナー経営者、管理本部理事、BCG担当者への取材をもとに、資本政策支援プロジェクトの裏側にせまる。

根本 雅之
株式会社ビジコンネクスト 代表取締役 根本 雅之

1954年、福島県生まれ。福島大学経済学部卒業。損害保険会社を経て、外資系生命保険会社に勤務。水戸支店のマネージャーとして活躍後、1990年に株式会社ビジネスコンサルタント(現:株式会社ビジコンネクスト)を設立。以来、同社は30期連続で黒字を達成。事業承継・自社株対策、福利厚生、企業防衛、リスクマネジメント、労働紛争対策など、おもに法人向けの保険コンサルティングを行っている。

相川 義則
株式会社ビジコンネクスト 管理本部 / 理事 相川 義則

中央大学第二商学部卒業。大手流通グループにて関連会社の成長プロジェクト責任者を経験。企業成長支援に魅力を感じ、証券会社・VC・監査法人などからの紹介により、これまで数社のベンチャー企業に参画。2020年4月に株式会社ビジコンネクストに参画し、関係機関との連携や管理体制の整備などを進めている。

田中 剛
ブリッジコンサルティンググループ株式会社 IPO支援事業部 シニアマネージャー / 公認会計士 田中 剛

大手監査法人にて、会計監査・アドバイザリー業務などを経験。その後に事業会社へ転職し、管理部門責任者として、事業立ち上げや事業統括、M&A、IPO準備などを経験。有力ITベンチャーでは総額50億円超の資金調達を手がける。2020年2月、ブリッジコンサルティンググループ株式会社に入社。これまでの経験を活かし、成長フェーズのベンチャー企業に対して幅広く支援を行っている。

INTERVIEW

時代の潮目をとらえ、保険コンサルティングを開始

ビジコンネクストの誕生は30年前にさかのぼる。当時、生命保険会社の敏腕マネージャーだった根本雅之氏が独立し、茨城県水戸市に新たな保険代理店を開業した。転機が訪れたのは設立7年目。保険業法の改正によって、「ひとつの保険代理店では特定の保険会社の商品しか取り扱えない」という規制が緩和され、複数の保険会社の商品を横断的に取り扱えるようになったのだ。いわゆる日本版金融ビッグバンの一環である。

根本氏 「設立当時、保険はおつきあいで加入するものでした。しかしながら1996年の規制緩和によって、保険の加入者自身が主体的に選ぶものに変わった。そこから当社の"保険コンサルティング"という概念が生まれたのです」

この時代の変革期に、同社は中立的で顧客視点の提案を実践。乗合代理店の強みを活かし、茨城県内で確固たる基盤を築く。1998年には東京営業部を設立し、マーケットを拡大。オーナー経営者たちの潜在ニーズを丁寧に掘り起こし、着実な成長を続けていった。

次なる転機は2014年に訪れる。現在の主力サービスである「自社株コンサルティング」を確立させたのだ。これは複数議決権株式や生命保険などを組み合わせて、自社株の評価額を引き下げるスキーム。オーナー企業にとってメリットの大きい画期的な事業承継対策として、多数の未上場企業から支持を得ていった。

このサービスが起爆剤となり、同社の成長は加速。2014年から5年間で売上高は2倍以上、当期利益は約5倍に急成長を遂げる。2019年9月期の売上高は9億円を超え、過去最高を記録した。そして2019年12月、社長の根本氏は新たな成長戦略を構想する。

根本氏 「当社は業績も財務体質も良好なので、会社が傾くような心配はありません。とはいえ、オーナシップを維持したままの経営スタイルで100年続く企業になるのは難しい。そこで一段上の成長ステージをめざして、資金調達手段を多様化したいと考えたのです」

INTERVIEW

証券会社の方針転換と専門家の選定

2020年4月、ビジコンネクストは新たな成長戦略を実行する部門を新設。管理本部理事として、実績豊富な相川義則氏が招聘された。これまでに同氏は7社以上の成長企業を支援し、資本政策にも関与してきたという。

相川氏 「次の成長ステージへ向けて、すでに当社の事業計画はある程度整っていました。したがって、次は外部からの資金調達を見据えた資本政策が必要になります。私なりに大枠は作成できますが、資本政策は会社の生命線なので、細部にミスがあってはいけません。そこで、まずは証券会社に相談しました」

これまでは、実務慣行として証券会社などが資本政策の立案をサポートしていた。しかし、近年は証券会社側もリスクと社内リソースの観点から直接タッチせず、各分野の専門家を紹介するケースが増えている。そこで資本政策をサポートする“社外CFO”として白羽の矢が立ったのがBCGだ。同社は多数の公認会計士をネットワークし、その成長が著しいベンチャー企業。決め手は担当者・田中剛氏の誠実な姿勢だったという。

根本氏 「私が士業の方に求めるものは、リスクに対して敏感で知っている情報や最新の動向を事前にクライアントに伝える姿勢です。しかしながら、ある特定の事象が起こった後にその要因を論評するだけの人も少なくありません。一方、田中さんは自ら積極的に提案する中で、当社の場合は今後どのようなことが起こりうる状況で、その事象に対処するためにはどのような資本政策を組むべきか、常に“当事者意識”と主体性をもって教えてくれました」

BCG田中氏 「積極的な提案に関して、最初は私も奥歯に物がはさまったような言い方をしていました。でも根本社長から『田中さん。できるなら、できると言い切ってほしい』と求められ、言動を改めたんです。そこから“当事者意識”をより強くもって、この業務に臨むようになりました」

INTERVIEW

資本政策の立案を支援する"社外CFO"

ビジコンネクストの資本政策には3つの大きな目的がある。1つめは、自社の成長ストーリーの全体像を描くこと。2つめは、会社のカルチャーを大切にするために株主構成を工夫すること。そして3つめは、社員らの貢献度に応じてインセンティブなどを厚くすることだ。

BCGがサポートを開始したのは2020年6月。田中氏を中心とするBCGの公認会計士メンバーが‟社外CFO”として参画した。第三者的なコンサルタントではなく、非常勤の財務責任者のような役割である。

まずは社長の根本氏にヒアリングを行い、同社の中長期的なビジョンを把握。事業計画をもとに今後のエクイティストーリーを描き、将来の株主構成や具体的な施策などを可視化したという。

BCG田中氏 「根本社長はもともと税務分野に詳しいので、自社株の評価について活発な議論を交わしました。また、創業者利益の確保は重視していないが、将来は株式上場を見据えているとお聞きしました。そういった点をふまえてエクイティストーリーを描きつつ、資本政策表に反映したのです」

BCG田中氏 「BCGの手厚いサポートのおかげで、非常にスムーズにプロジェクトを進めることができました。次の成長ステージが楽しみでたまりません」

INTERVIEW

社員持株会を解散し、ストックオプションを段階的に付与

相川氏は、これまでに数多くのベンチャー企業を一段上の成長ステージへ導いてきた。そのうえでBCGの支援に感心した点は、インセンティブプランの設計だという。今回ビジコンネクストは社外CFOの提案を受けて、2012年から続けてきた社員持株会をあえて解散。同会の参加資格をもつ社員を中心に、無償ストックオプション(新株予約権)の段階的な付与を決めたのである。

相川氏 「ストックオプションの仕組みや特性は理解しているし、現行制度に至るまでの紆余曲折も知っています。しかし、当社にとって最適な方法については模索していました。そこをBCGの提案によって、付与のタイミングと各社員が付与数に応じて得られるインセンティブの具体的な金額、対象者の区切り方など、詳細にイメージすることができました」

根本氏 「非常に良いアドバイスをいただき、当社がやるべき内容と時期が明確になりました。来期以降は市場創造に貢献した社員にストックオプションを付与するなど、経営理念にそったプランを描いています」

BCG田中氏 「今後入社するメンバーも視野に入れて、各社員の貢献した成果がインセンティブプランにきちんと反映されるよう、特に神経を使いました。その際、企業価値や株価の設定に留意しましたね。そこが不明瞭だと、具体的なストックオプションの適切な付与数や権利行使価格を設定できませんから」

今回の支援範囲は資本政策の立案。それが完成した6月末に契約を終えるはずだったが、当初の予定を変更するという。

相川氏 「とても対応が良かったので、施策の実行段階まで今後もサポートをお願いするつもりです」

根本氏 「社外CFOにはとても価値を感じています。あくまで“社外”という立場ではありますが、今後も末永く関わってほしいですね」

INTERVIEW

地方企業や業界のロールモデルになり、活性化の触媒に

会社のさらなる成長、その延長線上に相川氏は業界全体の活性化を、根本氏はオーナー企業への好影響を期待している。

相川氏 「当社のステージが上がれば、保険代理店業界のロールモデルになるかもしれません。それが業界全体の認知度や地位向上につながればいいですね」

根本氏 「日本経済を支えているのは地方の優良企業であり、その多くが未上場です。茨城で生まれた当社がいつか上場を果たすことで、同じ道をめざすクライアントが増えると非常に嬉しい。そのときにBCGの力を借りられたら、なお嬉しいですね」

2020年9月現在、根本氏は65歳。古希を迎える5年後には、後継者に社長の座を譲る予定だという。今回のインタビューでは関西地方への拠点展開、個人資産による奨学金制度の創設など、その先の展望についても明かした。ビジコンネクストと根本氏の‟ネクストチャレンジ“は終わらない――。

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