事業承継M&Aを加速させグロース市場へ。専門家と二人三脚で挑んだ上場準備の舞台裏

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事業承継をテーマとした製造業のM&Aロールアップモデルで成長を続けてきた株式会社セイワホールディングス(以下、セイワホールディングス社)。IFRSを適用してのIPOという難易度の高い挑戦に取り組み、原価計算体制の構築からIFRS対応、上場審査まで短期間で乗り越えてきました。 

限られたリソースの中、外部専門家との連携をどのように進め、上場を実現したのか。取締役副社長の井川氏、経理本部長の山下氏に、上場準備の舞台裏とブリッジコンサルティンググループ株式会社(以下、BCG)との関わりについて伺いました。 

  • 株式会社セイワホールディングス 取締役副社長

    井川 径成

    岡谷鋼機株式会社にて8年にわたり一貫して、会計・税務、開示書類作成、資金調達、投融資管理など経理財務業務全般に従事。その後、デロイトトーマツコンサルティング合同会社(現 合同会社デロイト トーマツ)に入社し、主にファイナンス領域に関係する組織再編や業務改革、経営管理高度化、管理会計構築プロジェクトに参加。

  • 株式会社セイワホールディングス  経理本部 本部長

    山下 裕輔

    フジフーズ株式会社にてコンビニ向け総菜の商品開発に従事した後、公認会計士論文式試験に合格し株式会社東祥に入社。JASDAQから東証二部への鞍替え、及び一部への指定替えに従事したほか、ホテル事業部の会社分割に携わり、ABホテル株式会社の取締役管理部長としてJASDAQへのIPOを実現。その後、名南M&A株式会社にて管理部門責任者を務める。

Interview

会社の沿革と上場を目指した背景

 

──セイワホールディングス様のこれまでの沿革と、上場を目指したきっかけについて教えてください。 

井川氏 前身となる有限会社セイワ工業は1995年、現在弊社の代表である野見山の父親が創業しました。野見山が大学生の頃に父親の会社でアルバイトを始めたことをきっかけに入社し、2019年に代表交代という形で事業を承継しています。野見山の入社当時は債務超過という厳しい経営環境の中、立て直しに奔走したと聞いています。 野見山自身が経験した親族内承継の苦労を踏まえ、「事業承継」を軸とした製造業のロールアップモデルを着想しました。2019年に初めてM&Aを2件実施して以降、M&Aを加速させてきましたが、このビジネスモデルは資金的な裏付けが不可欠であり、必然的にIPOという選択肢につながっていきました。私自身は2020年10月の入社ですが、その時点ですでに漠然とIPOを見据えていましたね。

──上場を目指すことは、採用面にも影響がありましたか。 

井川氏 採用面でのブランディング効果も、IPOを目指す動機の一つでした。中小規模の製造業は採用が難しく、「上場グループである」ことは大きなブランディングになります。特に若手採用では保護者の理解が重要となる場面も多く、知名度のある企業であることが後押しになったと思います。実際、準備期間中も必要なタイミングで必要なスキルを持つ人材を戦略的に採用できていました。

山下氏 上場後の採用効果については、上場自体の効果なのか採用体制の整備によるものなのか判断が難しい面もありますが、今のメンバーは入社時点で完成されていたわけではなく、その後確実に成長できています。それ自体が本人たちにとってのプラスになっていると感じます。

Interview

上場準備の本格始動とBCGへの依頼経緯

──上場準備を進める上で、どのような課題があり、外部への支援を検討されたのでしょうか。

山下氏 弊社がIFRS適用でIPOを目指す決定をした時点では、社内にIFRSの知見を保有する者がおらず、何から手をつければよいか分からない状態からのスタートでした。会社の時価総額に直結する、数十億〜数百億円規模のインパクトを持ちうる課題であることを踏まえると、経験豊富な外部専門家に頼らざるを得ませんでした。

──BCGに支援を依頼された経緯や、決め手を教えてください。 

井川氏 BCGとの関わりは、本格的なIPO準備よりも前、原価計算体制の構築支援から始まりました。当時はショートレビューの準備を進める中で、リソース不足に加え、原価計算の仕組み自体が整っていませんでした。そうした中、証券会社担当者からの紹介をきっかけにBCGへ依頼した形です。他社との比較検討を行う時間的余裕もなく、紹介を通じた信頼がそのまま契約につながりました。実際に支援を担当する予定の会計士の方と、事前に直接面談をするプロセスを経て、最終的にお願いすることにしました。

山下氏 原価計算支援では、現場の運用負荷と監査対応のバランスが取れた支援であったと思います。細かすぎて現場が疲弊することもなく、かつ監査に耐えうる制度設計として着地した点は、今も評価している部分です。さらに他の子会社の原価計算支援では、管理会計を製品群ごとに確実に実施したいというニーズに対して、具体的な改善案を提示しつつ支援をしてもらい、現在では期待どおり効果的に運用されています。 その後、IFRS導入が会社方針として決定した局面でも、改めてBCGに相談する流れになりました。結果として、経験豊富な専門家に頼らなければ成り立たなかったと、強く感じています。

Interview

上場準備の中で苦労された点

──上場準備の中で、苦労された点を教えてください

井川氏 IFRS導入対応が最大級のプロジェクトとなり、大きな負荷がかかりました。また証券会社審査・東証審査では、グループ内の子会社数が多いことから、一つの質問事項に対して十数社分の個別回答が必要になるなど、工数の多さに苦労しました。 近年は審査で労務・コンプライアンス面が特に重視されるようになっていることを踏まえ、労務DDをグループ全社的に実施するなどの対応をしました。M&Aによって性質の異なる会社がグループに加わる中、コンプライアンス体制や相談窓口の導入で現場に混乱が生じないよう配慮しながら進めた点も苦労したポイントです。

──事業承継M&Aが軸となるビジネスモデルならではのご苦労はありましたか。

井川氏 申請期はM&Aを原則停止していました(実質1件の事業譲渡のみ)。グロース市場が期待する右肩上がりの業績をどう実現するかは大きな論点でしたが、適切な会計処理の整理と監査法人との丁寧なすり合わせを重ねて乗り越えることができました。

山下氏 IFRSを導入した上でのIPOという点もあり、監査対応の現場では実務への落とし込みに際して綿密なすり合わせが求められる場面も多く、弊社・監査法人双方にとって大変苦労の多いプロセスでした。そうした状況の中でも、BCGの支援チームには、基準の深い理解に基づき監査法人と粘り強い折衝を続けていただいたと評価しています。

Interview

外部専門家を活用してよかった点

──外部の専門家を活用してみて、よかった点を教えてください。

山下氏 専門家と呼ばれるだけの圧倒的な知識と、監査法人との協議に必要な論点整理や資料作成力、そして議論の場で率先して方向性を示してくれる姿勢が大きかったです。上場審査の過程で専門的な論点が出た際にも助言をいただき、会計論点について、弊社・監査法人・BCGの三者で議論を深める場面もありました。 自社だけで一から調べていた場合には多大な時間を要し、監査法人からの信頼度も得にくかったと思います。特にPPA(取得原価配分)は「見積もりの中の見積もり」というくらい正解のない領域で、監査法人と見解を一致させるまでに幾度も深い議論を重ねましたが、粘り強く対応してもらえたことに感謝しています。支援担当者個々についても、監査法人との折衝力やバランス感覚、専門知識の深さ、レスポンスの速さなど、信頼できると感じる場面が多くありました。

Interview

上場後の心境と今後の展望

 

──上場を果たされた今のお気持ちを聞かせてください。 

井川氏 パブリックカンパニーとなり、投資家の視点にさらされる中で、説明責任や業績達成への意識がより一層強まりました。ゴールではなくスタートラインに立って、今スタートダッシュを全力でしているというような感覚ですね。実際に上場効果として、M&A交渉における売主側の安心感の向上も実感しています。

──今後の御社の組織および事業展開における展望を教えてください。

井川氏 組織面では、事業成長のスピードに組織体制の整備が追いついていない現状を課題として認識しています。コーポレート部門・経営管理部門を中心とした採用を継続し、短期的には先行投資的な位置づけになるとしても、まずは盤石な組織基盤を作る時期だと考えています。人材が整うことで次のステージに進むという好循環を作っていきたいですね。 事業展開については、進行期にすでに複数件のM&Aを発表しています。今後も事業承継という社会課題への対応を加速させ、特に自社が強みを発揮できる領域(現状では表面処理業界など)への集中投資を進めることで、「その領域のロールアップと言えばセイワホールディングス」というブランディングを複数の領域で確立していきたいと考えています。

写真左から:山下様、中山 博行(ブリッジコンサルティンググループ)、片山 真希(ブリッジコンサルティンググループ)、井川様

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