CFOの視点から紐解く、上場成功への戦略と軌跡とは?

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上場準備の過程で直面した課題や苦労を乗り越え、無事に上場を果たした株式会社ビースタイルホールディングス(https://www.bstylegroup.co.jp/、以下、ビースタイルホールディングス)の加藤CFO。上場準備の裏側や特徴的な人事制度、CFOとしての心構えなどについて伺いました。

  • 株式会社ビースタイルホールディングス 取締役CFO

    加藤 勝久

    1996年佐藤工業株式会社に入社。経理・財務業務に従事。その後、上場会社、上場準備会社にて管理部長、CFOを歴任し、2019年に株式会社ビースタイル(現:株式会社ビースタイルホールディングス)の取締役CFOに就任。2024年12月に東証グロース市場に上場。

Interview

上場準備の歴史と体制構築

──貴社の上場を目指したきっかけと時期について教えていただけますでしょうか?

加藤氏 会社設立した2002年当時から上場を目指していましたが、様々な要因から延期となっていました。その後、2018年頃から業績が拡大したこともあり、上場準備を再開し、2019年に私が入社し、その動きは加速しましたが、コロナの影響で業績が落ち込み、再度延期に。そして、2023年頃からの業績回復に合わせて、2024年上場を新しい目標として再チャレンジし、この度無事に上場を果たしました。

──加藤様が入社された後、上場準備はどのような体制で行われましたか?

加藤氏 当時は5名ほどのメンバーで上場準備チームが構成されていましたが、上場準備経験がなく課題への対応ができない状態でした。そのため、私自身が課題を整理し、一つ一つ対応していきました。そんななかで月次決算にも課題があり、既存メンバーでは対応が難しかったため当時の監査役に相談したところ、ブリッジコンサルティンググループ(以下、BCG)を紹介していただきました。BCGには、月次決算の体制構築支援に加え会計システムの移行もサポートしていただきました。 その後J-SOX領域や毎年実施する必要があった株価算定についても、BCGに支援を依頼することで効率的に進めることができました。 その他、法務部門については外部から見識のある人材を招き、人材派遣に関する業法などの課題にも対応してもらいました。内部の優秀な人材と外注とを適切に使い分けながら、上場準備チームとしての役割分担を明確にしていきました。

Interview

上場準備における課題と乗り越え方

──上場準備において、加藤様が一番苦労された点は何でしょうか?

加藤氏 上場準備において一番苦労したのは、コロナの影響による業績低迷でした。当社は当時5つの事業を行っておりましたが、売上を大きく占める事業が、コロナ禍で減収傾向となり、主幹事証券会社から「売上全体に占める割合が多い事業が増収増益トレンドにならないと上場は難しい」と言われたことです。

──その派遣事業の業績低迷の問題は、どのように乗り越えられたのでしょうか?

加藤氏 当該事業の業績低迷の問題を乗り越えるために、人脈等を生かしセカンドオピニオンを集め、その中で、当該事業の業績だけではなく、グループ全体の業績でクリア(増収増益)できればよいという助言もあり、そういった情報を基に主幹事証券会社や東京証券取引所(以下、東証)と協議を重ねました。そこで当該事業の改善状況や原因、解消に向けた取り組みを丁寧に説明したことで関係者にご理解いただけたと考えています。

Interview

資金繰りの課題と解決策

──コロナ禍での上場準備において、他に苦労された点はありますか?

加藤氏 コロナ禍での苦労としては、資金繰りの問題が大きかったです。派遣事業やメディア事業の業績低迷により、資金繰りが悪化していました。特に当社では消費税や社会保険料の支払いが億単位であり、資金ショートが懸念される状況でした。資金調達が難航する中でしたが、幸いコロナ禍での特例措置により消費税や社会保険料の支払いを繰り延べることができたこと、商工中金から資本性劣後ローンを提案されたことで、9ヶ月間の交渉の末、7億円の調達に成功しました。この資金繰りの目処が立つまで、本当に厳しい状況が続きました。

──結果的に資本性劣後ローンの調達に成功し、上場に向けて動き出すことができましたが、その過程で得た教訓や学びはありますか?

加藤氏 資金繰りに追われる中でも、内部管理体制の整備は粛々と進めていたため、証券審査や東証審査ではほとんど指摘がありませんでした。質問への回答作成は大変でしたが、改善や整備を求められることはさほどありませんでした。

Interview

特徴的な人事制度と働き方

 

──貴社は「主婦の就職支援事業をはじめ、活躍の機会を得られずに埋もれていた優秀な人材に働く機会を提供すること」をテーマに事業を展開されています。そんな貴社の人事制度の特徴について教えてください。

加藤氏 当社の人事制度の特徴としては、「キャリアチャレンジ制度」と「フレックスタイム制(当社での名称:オクトワーク)」が挙げられます。キャリアチャレンジ制度は、一定の条件を満たした社員が、自身の希望に基づいて異動や昇格にチャレンジできる制度です。社員のキャリア形成を支援し、モチベーションの向上につなげています。フレックスタイム制は、コアタイムを設けず、社員が自身の裁量で勤務時間を決められる制度です。ワークライフバランスの実現と生産性の向上を目的に導入しました。これらの制度により、社員の自律性を尊重しつつ、働きがいのある職場環境の構築を目指しています。 その他社内公募制度や、上司と部下が年1回キャリアについて話し合うWILL面談制度なども導入しています。また、育児や介護などで時短勤務になっても、正社員と同じように評価されるワーク&ライフ制度も特徴的です。社員がライフステージに合わせて柔軟に働ける環境を整えています。当社の社長である三原は人材業界に長く携わっているため、人材に関する知見やアイデアが豊富なんです。私自身も転職経験が多いのですが、ここまで社員のキャリアを考えてくれる会社は他にないと感じています。人材会社ならではの特徴かもしれませんね。

Interview

上場準備におけるアウトソーシングの重要性

──上場準備を進める中で、アウトソーシングについてどのようにお考えですか?

加藤氏 上場準備は社内のリソースだけでは難しい部分もあるので、アウトソーシングは重要だと思います。特に、社内に知見がない領域については、積極的に外部リソースを活用すべきです。 アウトソーシングできるところは専門家に任せることで、スケジュールを短縮して効率的に上場準備を進めることができます。私が最初に上場準備に関わった、20年近く前は、外部のコンサルを活用する会社は少なかったと思いますが、今は主幹事証券会社の方針も変わってきており、いかに外部リソースを活用して効率的に上場するかということが重要視されるようになってきたと感じます。私個人としては、上場準備において経理などの業務も全てアウトソーシングしてもいいと考えています。上場準備期間中は通常業務に加えて上場準備に関連するタスクが発生するため、既存の社員への負荷が大きくなります。結果、業務過多により社員が離脱するリスクもあります。 ただ、コストとのバランスを考える必要があります。上場準備業務の内製化とアウトソーシングのバランスを取った体制構築が重要であると考えています。

──上場準備において、CFOはどのような心構えが必要だと思いますか?

加藤氏 上場準備においてCFOは、本来やらなければいけない仕事をきちんと選別し、主幹事証券会社対応や監査法人への対応などの主要な課題に特化することが重要です。また、時価総額を伸ばすことや企業価値を高めることに注力すべきだと思います。

──最後に、上場を目指すCFOの方々にメッセージをお願いします。

加藤氏 これから上場を目指す方は、外部リソースを活用して、いかに短期間で、スムーズに上場を実現するかということを追求していただきたいです。BCGのようなサポート企業が増えることで、上場準備がより盛り上がっていくと思います。CFOの方々には、内製にこだわるのではなく、企業価値を高めることに注力していただきたいですね。

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