会計基準の改正と今後の展望
会社の決算を担当されている皆様にとって当期から適用になる会計基準の改正事項は必ず押さえる必要のある事項です。また会計実務に大きな影響をもたらす会計基準の改正は数年先でも早めに検討を始めることが必要です。この記事を読むことが、決算担当者の皆様の気づきにつながりますと幸いです。
1. 税効果会計に係る会計基準の改正
2018年2月16日に公表された『「税効果会計に係る会計基準」の一部改正』等が3月決算会社では2019年3月期からの適用となっています。改正のポイントが5つありますので、それぞれ解説します。
①個別財務諸表における子会社株式または関連会社株式に係る将来加算一時差異の計上について
今までは個別財務諸表上、子会社株式または関連会社株式に係る将来加算一時差異については、清算するまでずっと赤字で課税所得が見込めないという場合を除いて、繰延税金負債を計上する必要がありました。今回の改正で、売却の予定が見込めない子会社株式または関連会社株式については繰延税金負債を計上しないことになりました。
②会社区分が分類1の会社の繰延税金資産の回収可能性に関する取扱いの変更
今までは分類1に区分される会社ではスケジューリング不能な将来減算一時差異を含め、繰延税金資産を全額計上することとされていました。具体的には、完全支配関係にある日本国内の子会社株式評価損について、会社がその子会社を清算するまで当該子会社株式を保有し続ける方針がある場合は、将来、税務上、損金算入される可能性は低く、繰延税金資産の回収可能性はないと判断されますが、繰延税金資産を全額計上していました。改正後はこのような場合には、繰延税金資産を計上しません。
③繰延税金資産・繰延税金負債の表示区分の変更
今までは、繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、表示区分を分類していました。改正後は、繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示します。すなわち、改正前は流動固定分類に気を使う必要がありましたが、改正後はその必要がなくなりました。
④評価性引当額の内訳に関する情報の開示
改正前は、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するにあたっては、評価性引当額の合計額を記載してきました。ここで、改正後において、発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金を記載しており、当該税務上の繰越欠損金の額が重要な場合には、評価性引当金の合計額を、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載することが求められます。また、前期と比較して、評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合には、その変動の主な内容を記載することが求められています。
⑤税務上の繰越欠損金に関する情報
発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、繰越期限別に税務上の繰越欠損金に関する数値情報を開示する必要があります。また、税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載することが今回の改正により求められています。
2. IFRS16号「リース」の適用は会計実務に大きな影響を与える
IFRSを適用している会社は、2019年1月1日以後開始する事業年度よりIFRS16号「リース」が強制適用されます。従来の日本基準やIFRSではリース契約をファイナンス・リース契約とオペレーティング・リース契約に区分し、オペレーティング・リースについてはBS計上しませんでした。しかし、このIFRS16号「リース」では、全てのリース契約に関して使用権資産およびリース負債の認識が求められます。
そのため、結果として、重要なリース契約が日本基準やIAS17号においてオペレーティング・リースに分類されていた子会社等においては、金融負債および固定資産の計上額が大きく増加する可能性が高いです。
ここで、借手の使用権資産は、IAS16号「有形固定資産」に従って、通常、定額法により減価償却されます。また、リース負債は実効金利法を用いて測定されるため、リース負債に係る金利費用(支払い利息)も認識されます。
ここまでIFRS16号「リース」について紹介してきましたが、日本でもこのIFRS16号を基本的に踏襲する会計基準の策定が進められています。
3. 収益認識に関する会計基準の強制適用は2022年3月期から
収益認識に関する会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用となっています。従来は収益認識に関する基準がなく、各会社の実情に合わせた幅広い売上の認識を行っていただいておりました。 今回、基準が設定されたため、今後は当該会計基準に沿った売上認識をしていく必要があります。そして、次の①~⑤の要件を全て満たす顧客との契約を識別します。
- ①当時者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束する
- ②移転される財またはサービスに関する各当事者の権利を識別できること
- ③移転される財またはサービスの支払条件を識別できること
- ④契約に経済的実質があること
- ⑤顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと
自社の売上を分類し、その売上分類ごとにこの「収益認識に関する会計基準」を適用していくことになるので、早めの準備が必要です。