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2020年4月28日

クラウド会計システムってぶっちゃけどう?

企業における事務処理でコンピュータによる処理は不可欠なものとなっています。コンピュータ登場前は不確実な手作業により決算書を作成していました。その後、汎用コンピュータ上で自社開発の会計システムが運用されるようになり、正確な集計が可能となりました。さらに、パソコンやネットワーク化によるサーバが普及するとクライアントサーバ型の分散処理が行われるようになり、処理スピードの高速化、並行作業など飛躍的に効率性が高まりました。また、会計システムのような標準化可能なシステムでは、標準的な機能を集約した専用パッケージソフトが登場し、会計処理の正確性、効率性はさらに高まりました。

現在では、会計システムはパッケージソフトを利用することがほとんどですが、インフラ面ではオンプレサーバからクラウドサーバに移行することが多くなっています。そして最近では、サーバ自体も持たず、クラウド上の会計システムをだけを利用する会社も増えてきています。

今回は、最新の流れであるクラウド会計システムの概要についてお話しすることで、クラウド会計システム検討の指針となれば幸いです。

1. クラウドシステムとは

クラウドシステムとは、ネットワークを経由して利用するシステムで、雲(クラウド)の中にあるように所在が不特定のシステムのことです。安全性を考慮してデータセンターなどに自社サーバを設置しネットワーク経由で利用する形態は従来からありましたが、あくまで自社のサーバであり所在は明確です。一方、クラウドシステムでは、サーバやシステムを運営者から使用許諾は受けますが、利用者側では具体的な所在は特定できず(する必要もなく)、機能だけを利用する形態です。利用する機能の範囲で以下に分類されます。

SaaS(Software as a Service) ソフトウェアを利用(例:Gmail)
PaaS(Platform as a Service) 開発環境などを利用(例:Google App engine)
IaaS(Infrastructure as a Service) ハードウェアを利用(例:Google Computer Engine)

2. クラウド会計システムとは

クラウド会計システムとは、クラウド環境で会計処理を行う機能を持ったシステムのことです。主にはSaaSの形態で提供され、大きく2つのタイプに分けることができます。

  • ①従来のオンプレ環境で利用されていた会計システムをクラウド環境に移管したタイプ
  • ②クラウド利用を前提に新たに開発されたタイプ

①は、機能面では従来と変わらないので会計システムとしての高機能が使えますが、クラウド化による特有のメリットは限定的です。②はクラウド前提で開発されており、クラウド化のメリットを最大限利用できますが、機能面では①のタイプに劣る場合もあります。

2. クラウド会計システムのメリット

・導入が簡単

従来の会計システムは、ソフトウェアを購入し、サーバやパソコンにインストールする必要がありました。また購入するため、失敗した際の無駄が大きく、導入時に比較、試用など多くの労力が必要でした。一方、クラウド会計システムでは、申し込みだけ行えば、インストールは不要ですぐ利用することが出来ます。また、もし利用出来ない場合でも、使用停止することは容易です。

・常にバーションアップされる(法対応の容易さ)

従来の会計システムでは、新規機能や法対応などのバージョンアップはその都度、インストールが必要でした。一方、クラウド会計システムでは、運営者側で保守が行われるので、その都度のインストール作業は不要です。法対応も運営者側で対応されるため、コンプライアンスの観点からも安心感が向上します。

・他のサービスとのデータ連携が容易

「②クラウド利用を前提に新たに開発されたタイプ」に限られることが多いですが、他のサービスとの連携を強化して開発されています。具体的には、銀行口座やクレジットカードなどの金融機関とのデータ連携、他のクラウド業務システム(販売管理システム、給与システムなど)とのデータ連携などで、さらにAIによる自動仕訳にも対応しているシステムもあります。従来の会計システムでは、独自開発などで対応していましたが、クラウド会計システムでは容易に連携できるようになっています。

・IT運用保守の負担低減

従来の会計システムでは、サーバの稼働、物理的な場所、死活監視、障害対応やバックアップなど運用保守のためにIT要員が必要でした。一方、クラウド会計システムは、運営者がすべて運用保守を行いますので、IT運用保守の負担が低減されます。

・機能選択の柔軟性(コスト管理)

従来の会計システムでは、購入したアカウント数や機能で使用するのが前提であり、急な変更には制約が多いため、余裕を持たせて購入していました。一方、クラウド会計システムでは、アカウント数や機能は柔軟にその都度選択することが出来ます。予備の投資をする必要がなくコスト管理にも繋がります。

・場所に縛られない(共有が容易)

クラウド会計システムはネットワーク経由で利用するので、どこでも利用することが出来ます。そのため、外部の専門家(会計士、税理士など)にもアカウントを発行するだけで、共有することができ、業務の効率性が向上します。

3. クラウド会計システムのデメリット

・カスタマイズ性の低下

従来の会計システムは、パッケージソフトに独自のカスタマイズを開発可能としている場合があります。もちろん有償にはなりますが、業界や会社特有の処理など細かな機能を入れることも可能です。一方、クラウド会計システムは、全利用者で共有されるため、主要部分に独自のカスタマイズを入れることは難しくなります。小規模なアドオンのような追加機能は対応可能な場合もあります。

・処理速度の遅延

クラウド会計システムは、ネットワーク経由で利用されるので、処理速度がネットワークの性能に依存します。大量の処理やダウンロードなどに支障がある場合がありますが、最近のネットワーク環境は改善していますので、大きな支障が生じることは少ないようです。

・運用コストの増加

従来の会計システムは、閉じた社内ネットワークにデータがあるため、基本的には漏えいリスクは低く抑えられています。一方、クラウド会計システムは、所在不明のクラウド上にデータが保管されるため、情報セキュリティの観点で懸念を持つ方もいます。しかし、現在では自社で保管するよりも専門のセキュリティ対策や要員を利用したクラウド環境のほうが安全という考え方もあります。導入時に情報セキュリティ対策を確認することが大切です。

・サービスの継続性

クラウド会計システムは、あくまで使用許諾を受けているだけなので、運営者側の問題(倒産、買収、障害、サイバー攻撃など)により、サービスが利用できなくなるリスクがあります。しかし、クラウド会計システムのような有料の業務系システムで継続性に問題が出ることは稀です。導入時に運営者の健全性やシステムの安定度を確認することが大切です。

4. クラウド会計システムのすすめ

クラウド会計システムは、デメリットもありますが、データ連携やバーションアップ含めた運用保守の負担低減の効果が大きいため、業務効率は大幅に向上します。新規設立の会社、買収後の会社など比較的クリーンな状態で利用出来る場合には「②クラウド利用を前提に新たに開発されたタイプ」を積極的に検討すべきです。

従来の会計システムを長く利用してきた場合やカスタマイズが多い場合には、スイッチングコストが高くなります。スイッチする場合でも「①従来のオンプレ環境で利用されていた会計システムをクラウド環境に移管したタイプ」を選択するほうがリスクは少なく、クラウド環境のメリットも十分享受できると思います。

5. まとめ

会計システムは、専門的な領域で、機密性や正確性が高度に求められるため、カジュアルなイメージのクラウド会計システムへの移行が進まない場合があります。しかし、最近では企業が設備を抱えることのリスクの方が大きいと認識されてきており、一層クラウド会計システムの利用は進むものと考えています。

今回はクラウド会計システムの概要のみとなりますが、本記事が業務を進めるための参考となれば幸いです。