M&Aアドバイザリー契約とは?契約形態・報酬体系・注意点を徹底解説

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M&Aを検討する際、多くの経営者が直面するのが「どのようにM&Aを進めればよいのか」という疑問です。M&Aには財務・法務・税務など高度な専門知識が求められるため、自社だけで進めることは困難です。そこで重要になるのが「M&Aアドバイザリー契約」です。

M&Aアドバイザリー契約とは、M&A仲介会社やFA(ファイナンシャルアドバイザー)などの専門家にM&Aのサポートを依頼するために締結する契約です。この契約を結ぶことで、候補企業の探索から交渉、契約締結のサポート、デューデリジェンスの調整まで、M&Aに関わる一連の業務を専門家に委託できます。

しかし、契約形態や報酬体系は複雑で、初めてM&Aに取り組む経営者にとっては分かりにくい部分も多いでしょう。専任契約と非専任契約の違いは何か、報酬はどのように計算されるのか、契約時にはどのような点に注意すべきかなど、疑問は尽きません。

本記事では、M&Aアドバイザリー契約の基本的な仕組みから契約形態、交渉方式、報酬体系、契約時の注意点まで、M&Aを成功に導くために必要な知識を分かりやすく解説します。

M&Aアドバイザリー契約とは

M&Aアドバイザリー契約とは、M&Aを検討する企業が、M&A仲介会社やFAなどの専門家と締結する業務委託契約です。この契約により、M&Aに関する専門的なサポートを受けることができます。

M&A専門家と締結する業務委託契約

M&Aアドバイザリー契約は、法的には「業務委託契約」の一種に分類されます。具体的には、M&Aを検討している売り手企業または買い手企業が、M&Aアドバイザーに対して、M&Aに関する専門的な業務の遂行を委託する契約です。

M&Aを成立させるには、売り手・買い手ともに膨大な業務と高度な専門知識が必要になります。例えば、売り手企業であれば、自社の企業価値評価、企業概要書の作成、適切な買い手候補の選定などを行う必要があります。一方、買い手企業であれば、対象企業の価値査定、デューデリジェンスによる経営リスクの洗い出し、買収資金の調達などが求められます。

これらすべてを自社の人材だけで対応することは極めて困難です。そのため、M&Aの専門家であるM&A仲介会社やFAと契約を締結し、プロフェッショナルなサポートを受けることが一般的です。

M&Aアドバイザーが担う主な業務には、以下のようなものがあります。

業務内容 詳細 主な対象
候補先企業の探索・選定 自社に適した譲渡先・譲受先を探索し、リストアップする 両者
企業価値評価の支援 財務データをもとに適正な企業価値を算定する 両者
資料作成支援 企業概要書やIM(インフォメーション・メモランダム)を作成する 売り手
交渉の調整・支援 売り手と買い手の間に入り、条件交渉を調整する 両者
デューデリジェンスの調整 財務・法務・税務などの調査を専門家と連携して進める 買い手
契約書作成支援 基本合意書や最終契約書の締結に向けた調整をサポートする 両者
クロージング支援 M&A成立に向けた最終手続きを支援する 両者

アドバイザリー契約を締結するメリット

M&Aアドバイザリー契約を締結する主な目的は、M&Aを円滑に進め、成功確率を高めることにあります。具体的なメリットは以下の3点です。

1.M&Aをスムーズに実施できる

第一に、M&Aをスムーズに実施できる点です。M&Aには専門的な知識と豊富な経験が求められますが、自社だけで対応しようとすると、膨大な時間と労力がかかります。専門家と契約することで、効率的にM&Aを進めることができ、本業への影響を最小限に抑えられます。また、社内の担当者にかかる負担を大幅に軽減できることも大きなメリットです。

2.トラブルやリスクを低減できる

第二に、トラブルやリスクを低減できる点です。M&Aには財務面、法務面、税務面、人事面など、さまざまなリスクが潜んでいます。専門知識のない状態でM&Aを進めると、これらのリスクを見落とし、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。専門家と契約すれば、デューデリジェンスを通じてリスクを事前に発見し、適切な対応策を講じることができます。

3.自社に適した戦略・手法を検討できる

第三に、自社に適した戦略・手法を検討できる点です。M&Aには普遍的な正解はなく、企業の状況や市場環境に応じた柔軟な判断が求められます。専門家は豊富な経験とノウハウを持っているため、自社に最適な戦略や手法を提案してくれます。これにより、M&Aの効果を最大化できる可能性が高まります。

M&Aアドバイザーサービスについてご興味がある方は下記ページをご覧くださいませ。

M&Aアドバイザリーサービスについて

アドバイザリー契約と他の契約形態の違い

M&Aに関する専門家のサポートを受ける際の契約には、アドバイザリー契約以外にも「コンサルティング契約」や「顧問契約」があります。これらの契約形態との違いを理解しておきましょう。

コンサルティング契約との違い

コンサルティング契約とは、企業が抱える特定の課題に対して、コンサルタントが専門的な助言や解決策を提供する契約です。M&A領域においては、アドバイザリー契約とコンサルティング契約はほぼ同義で使われることも多く、明確な区別はありません。

強いて違いを挙げるとすれば、アドバイザリー契約は企業の将来に対して幅広い視点から助言を行い、M&Aプロセス全体をサポートする傾向があります。一方、コンサルティング契約は、現在直面している具体的な経営課題の解決に重点を置き、特定の領域を深く掘り下げる傾向があります。

ただし、実務上はM&A仲介会社によって呼称が異なるだけで、提供されるサービス内容は同一であることが多いです。そのため、契約名称にこだわるよりも、具体的な業務内容と範囲を確認しましょう。

顧問契約との違い

顧問契約とは、特定の分野において専門的な知識や経験を持つ専門家から、継続的にアドバイスを受けるために締結する契約です。アドバイザリー契約との主な違いは、契約期間と報酬体系にあります。

顧問契約は、特定の目的や期間を定めず、長期的な関係を前提として締結されることが一般的です。

  • 契約期間: 原則として期間の定めがないか、年単位での更新を前提とした長期的なものになります。
  • 報酬体系: 月額固定制が主流であり、毎月一定額の費用が発生します。

専門家は継続的に企業の相談役として機能し、必要に応じてアドバイスを提供します。

一方、アドバイザリー契約は、「M&Aの成約」という明確なゴールに向けた期間限定の契約です。

  • 契約期間: 通常、数ヶ月から1年程度に設定されます。
  • 報酬体系: M&A成立時に発生する「成功報酬」が主軸ですが、着手金、中間報酬、月額報酬(リテイナーフィー)なども組み合わせて設定される場合もあります。

このように、顧問契約は継続的な関係を重視するのに対し、アドバイザリー契約は特定のプロジェクト(M&A)の成功を目的とした契約であるという違いがあります。

M&Aアドバイザリー契約の契約形態

M&Aアドバイザリー契約には、「専任契約」と「非専任契約」という2つの契約形態があります。それぞれの特徴を理解し、自社に適した形態を選びます。

専任契約とは

専任契約とは、特定の1社のM&A仲介会社と独占的に契約を結ぶ形態です。契約期間中は、他のM&A仲介会社と同様の契約を締結することはできません。

専任契約の最大のメリットは、情報漏洩リスクを最小限に抑えられることです。M&Aの検討情報が外部に漏れると、従業員の不安や離職、取引先との関係悪化、競合他社による妨害などのリスクが生じます。専任契約では窓口が一本化されるため、情報管理を徹底しやすくなります。

また、M&A仲介会社側も、専任契約を結んだ案件は受託会社側のコミットメントが高まりやすく、優先的に対応する傾向があります。その結果、より丁寧で手厚いサポートを受けられる可能性が高まります。

さらに、自社が売り手の場合、複数のM&A仲介会社が同じ買い手候補企業に自社を紹介してしまうという事態を避けられます。同じ企業が複数のルートから紹介を受けると、「この会社は経営が厳しいのではないか」という印象を与え、交渉が不利になる可能性があります。専任契約であれば、こうしたリスクを回避できます。

非専任契約とは

非専任契約とは、複数のM&A仲介会社と同時に契約を結ぶ形態です。契約期間中でも、他のM&A仲介会社と自由に契約することができます。

非専任契約のメリットは、候補先企業の選択肢が広がることです。M&A仲介会社はそれぞれ独自のネットワークを持っているため、複数の会社と契約すれば、より多くの候補先から最適な相手を選べる可能性が高まります。

しかし、非専任契約にはデメリットもあります。複数のM&A仲介会社がさまざまな候補企業にアプローチするため、情報管理が難しくなり、情報漏洩のリスクが高まります。また、万が一情報が漏洩した場合、漏洩元を特定することが困難になります。

さらに、M&A仲介会社側としては、成功報酬が確保されていないため、専任契約の案件ほど優先的に対応しない可能性があります。その結果、手厚いサポートを受けられない場合もあります。

どちらを選ぶべきか

専任契約と非専任契約のどちらを選ぶべきかは、自社の状況や優先事項によって異なります。

情報管理を最優先し、手厚いサポートを受けたい場合は、専任契約が適しています。特に、従業員や取引先に知られたくない、競合他社に察知されたくないという場合は、専任契約を選ぶべきです。

一方、できるだけ多くの候補先を比較検討したい、複数のM&A仲介会社の意見を聞きたいという場合は、非専任契約も選択肢になります。ただし、情報管理のリスクを十分に理解した上で判断する必要があります。

実務上は、売り手の中小企業のM&Aでは専任契約が主流です。情報管理の重要性と、手厚いサポートを受けられるメリットが大きいためです。
ただし、専任契約を結ぶ際は、契約期間や中途解約の条件を事前によく確認しておくことが重要です。

M&Aアドバイザリー契約の交渉方式

M&Aの支援形態には、大きく分けて「アドバイザリー方式」と「M&A仲介方式」の2種類があります。

アドバイザリー方式とは

アドバイザリー方式とは、売り手企業と買い手企業がそれぞれ別のFAと契約を結び、各社の担当者が交渉を行う方式です。この方式では、M&Aアドバイザーは契約した一方の企業の利益のみを追求します。

アドバイザリー方式の最大のメリットは、自社の利益を最大化できることです。M&Aアドバイザーは契約した企業の利益を最優先に考えるため、価格交渉や契約条件において、より有利な条件を引き出せる可能性が高まります。

この方式は、主に大規模なM&Aや上場企業のM&Aで採用されることが多いです。上場企業は株主に対して説明責任があるため、株主の利益を最大化する必要があります。そのため、自社の利益を徹底して追求するアドバイザリー方式が適しています。

ただし、アドバイザリー方式にはデメリットもあります。双方が自社の利益を主張し合うため、交渉が難航し、長期化するリスクがあります。また、条件が折り合わず、交渉が決裂する可能性も高くなります。

M&A仲介方式とは

M&A仲介方式とは、同一のM&A仲介会社が売り手企業と買い手企業の双方と契約を結び、間に入り交渉をサポートする方式です。M&A仲介会社は、双方の利益のバランスを考慮しながら、円滑なM&A成立を目指します。

M&A仲介方式の最大のメリットは、交渉がスムーズに進みやすいことです。M&A仲介会社は双方の要望を把握した上で、利益のバランスを取りながら交渉を進めるため、条件の折り合いがつきやすく、成約までの期間も短縮されやすいです。

また、M&A仲介会社が持つ幅広いネットワークを活用できるため、自社に適した相手先を見つけられる可能性が高まります。さらに、社内にM&A専任者を配置できない中小企業でも、後々双方の企業に遺恨が残らないよう、友好的なM&Aを実現できます。

M&A仲介方式は、中小企業のM&Aで最も一般的に採用されている方式です。中小企業のM&Aでは、株主と経営者が同一であるケースが多く、大企業と比較して円滑な交渉とスピーディーな成約が重視されるためです。

中小企業に適した交渉方式

中小企業のM&Aでは、M&A仲介方式が適していることが多いです。理由は以下の通りです。

第一に、交渉がスムーズに進みやすいことです。中小企業のM&Aでは、利害関係が比較的シンプルであるケースが多く、双方が納得できる条件で早期に合意することが重要です。M&A仲介方式であれば、双方の間に入る立場から最適な条件を提案してもらえます。

第二に、経済的・時間的なコストを抑制できることです。

M&A仲介方式では、成功報酬として最低手数料で設定されている場合がありますが、売り手と買い手が一つの仲介会社と契約するため、それぞれが別々にFAと契約する場合と比べて、金銭的なリスクを最小限に留められ、費用負担を抑えられることがあります。

また、複数のFAを介在させる場合に生じる「条件調整の往復」や「情報の齟齬」が解消され、スピーディーな成約につながります。本業で多忙な経営者にとって、M&A実務に割く工数を削減できるメリットは非常に大きいと言えます。

第三に、友好的なM&Aを実現できることです。中小企業のM&Aでは、M&A後も両社が良好な関係を維持することが重要です。M&A仲介方式であれば、双方の利益のバランスを取りながら交渉を進めるため、M&A後も良好な関係を築きやすくなります。

M&Aアドバイザリー契約の報酬体系

M&Aアドバイザリー契約では、複数の種類の報酬が発生します。報酬体系はM&A仲介会社によって異なるため、契約前に詳細を確認しましょう。

着手金

着手金とは、M&Aアドバイザリー契約を締結した時点で支払う初期費用です。M&Aの成約の有無にかかわらず発生し、一度支払うと返金されません。

着手金は、M&A仲介会社が調査や書類作成、候補先企業の探索など、具体的な活動を開始するための初期コストをカバーするために設定されます。相場は案件の規模やM&A仲介会社によって異なりますが、50万円から200万円程度が一般的です。

近年では、M&A市場の競争が激化していることから、着手金を無料とするM&A仲介会社も増えています。

中間報酬

中間報酬とは、M&A交渉が一定の段階まで進んだ時点で支払う報酬です。一般的には、基本合意書の締結時に支払われることが多く、成功報酬の一部を先払いする形となります。

中間報酬の金額は、M&A仲介会社によって異なります。成功報酬の10%から20%程度、あるいは固定額で100万円から200万円程度に設定されることが一般的です。中間報酬は、M&Aが不成立に終わった場合でも返金されません。

近年では、中間報酬を無料とするM&A仲介会社も増えており、報酬体系の簡素化が進んでいます。

月額報酬

月額報酬(リテイナーフィー)とは、契約期間中に毎月定額を支払う報酬です。M&Aの進行状況にかかわらず、契約期間中は毎月一定額を支払う必要があります。

月額報酬は、M&A仲介会社が候補先企業の探索や面談、交渉の調整などの活動を行うための費用として設定されます。相場は、案件の規模やM&A仲介会社によって異なりますが、月額数十万円からが一般的です。

月額報酬がある場合、M&Aの交渉が長期化するほど、総支払額が増加する点に注意が必要です。近年では、月額報酬を無料とするM&A仲介会社も増えています。

成功報酬とレーマン方式

成功報酬とは、M&Aが成約した時点で支払う報酬です。M&Aアドバイザリー契約における費用項目であり、成約しなければ発生しません。

成功報酬の算出方法として、多くのM&A仲介会社では「レーマン方式」が採用されています。レーマン方式とは、取引金額に応じて段階的に報酬率が変動する計算方法です。一般的な料率は以下の通りです。

取引金額 報酬率
5億円以下の部分 5%
5億円超~10億円以下の部分 4%
10億円超~50億円以下の部分 3%
50億円超~100億円以下の部分 2%
100億円超の部分 1%

例えば、取引金額が15億円の場合、成功報酬は以下のように各階層に分割して計算されます。

・5億円(5億円以下の部分)×5% = 2,500万円
・5億円(5億円超~10億円以下の部分)×4% = 2,000万円
・5億円(10億円超~15億円の部分)×3% = 1,500万円
・合計:6,000万円

なお、「取引金額」の定義はM&A仲介会社によって異なります。主な定義としては、「株式価値」「企業価値(株式価値+有利子負債-現預金)」「移動総資産(株式価値+負債総額)」などがあります。どの定義を採用するかによって、成功報酬額が大きく変わるため、契約前に必ず確認しましょう。

また、多くのM&A仲介会社では「最低手数料」が設定されています。レーマン方式で計算した成功報酬が一定額に満たない場合、最低手数料が適用されます。

※最低手数料の金額はM&A仲介会社によって異なるため、契約前に必ず確認しましょう。

アドバイザリー契約書に記載される主な内容

M&Aアドバイザリー契約書には、M&Aを円滑に進めるためのさまざまな項目が記載されます。契約書の主な記載内容を解説します。

業務内容と範囲

契約書には、M&Aアドバイザーが担当する具体的な業務内容と範囲が明記されます。主な業務内容としては、候補先企業の探索と選定、企業価値評価の支援、資料作成支援、交渉の調整、デューデリジェンスの調整、契約締結のサポート、クロージング支援などがあります。

業務範囲を明確にすることで、どこまでがM&Aアドバイザーの責任範囲で、どこからが自社で対応すべき範囲かを明確にできます。これにより、後々のトラブル予防につながります。

報酬と支払条件

契約書には、着手金、中間報酬、月額報酬、成功報酬など、各報酬の金額と支払条件が明記されます。特に成功報酬については、計算方法(レーマン方式など)、取引金額の定義、最低手数料の有無などを詳細に記載する必要があります。

また、消費税の取扱いや、支払期限、支払方法なども明記されます。報酬に関する条項は、後々のトラブルを防ぐために、特に慎重に確認すべき項目です。

秘密保持義務

M&Aでは、企業の機密情報を多く扱うため、秘密保持義務に関する条項は重要です。契約書には、秘密情報の範囲、秘密保持の期間、秘密情報の取扱方法、漏洩時の損害賠償などが明記されます。

秘密情報の範囲は、企業の財務情報、顧客情報、事業戦略、従業員情報など、幅広く定義されます。秘密保持義務は、契約終了後も一定期間(通常3年)継続することが一般的です。

また、契約終了時に「機密情報の返却または廃棄」を義務付ける条項が含まれているかを確認することが、実務上の情報漏洩対策として重要です。

参考:中小M&Aの主な手法と特徴

専任条項と直接交渉の禁止

専任契約を締結する場合、契約書には専任条項が明記されます。専任条項とは、契約期間中は他のM&A仲介会社と同様の契約を締結してはならないという規定です。

また、直接交渉の禁止条項も重要です。これは、M&A仲介会社が紹介した候補先企業と、M&A仲介会社を介さずに直接交渉してはならないという規定です。直接交渉を行った場合、契約違反となり、損害賠償を請求される可能性があります。

H3: 契約終了後も適用される「テール条項」

専任契約においてもう一つ注意すべきなのが、「テール条項」です。テール条項とは、契約終了後一定期間内に、M&A仲介会社が紹介した候補先企業とM&Aが成立した場合、成功報酬を支払う義務があるという規定です。テール条項の期間は、通常6ヶ月から1年程度です。

参考:M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル

契約期間と解除条件

契約書には、契約の有効期間が明記されます。一般的には、6ヶ月から1年程度の期間が設定され、双方の合意により延長できる条項が設けられます。

また、契約の解除事由も明記されます。主な解除事由としては、報酬の未払い、虚偽情報の提供、重大な契約違反などがあります。契約を解除する場合の手続きや、解除時の報酬の取扱いについても明記されます。

中途解約に関する条項も重要です。契約期間中に解約できるかどうか、解約する場合の条件や違約金の有無などを確認しておく必要があります。

特に専任契約では、支援内容に不満がある場合に備え、「いつでも将来に向かって解約できる」旨の規定があるかどうかが、不適切な支援を避けるためのセーフティネットとなります。

アドバイザリー契約を締結する際の注意点

M&Aアドバイザリー契約を締結する際には、いくつかの注意点があります。これらを理解しておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。

中小M&Aガイドラインへの準拠を確認する

M&Aアドバイザーを選ぶ際には、中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」に準拠しているかを確認することが大切です。このガイドラインは、中小企業のM&Aが適切に行われることを目的に策定されたもので、M&A支援機関が遵守すべき基本事項や行動基準が明記されています。

ガイドラインに準拠しているかを確認する方法としては、以下の2点があります。

1.中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録されているか

第一に、中小企業庁の「M&A支援機関登録制度」に登録されているかを確認することです。この制度は、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために設けられたもので、登録されるにはガイドラインの遵守を宣言する必要があります。

2.「一般社団法人M&A支援機関協会」に加盟しているか

第二に、「一般社団法人M&A支援機関協会」に加盟しているかを確認することです。この協会は、公正で安全なM&A仲介を推進する業界団体で、適正な取引ルールの徹底を掲げています。

これらの登録・加盟状況を確認することで、信頼性の高いM&Aアドバイザーを選ぶことができます。

参考:中小M&Aガイドライン

参考:M&A支援機関登録制度

参考:一般社団法人M&A支援機関協会

報酬の計算基準を明確にする

M&Aアドバイザリー契約を締結する際には、報酬の計算基準を明確にすることが求められます。特に成功報酬については、計算の基準となる「取引金額」の定義がM&A仲介会社によって異なるため、注意が必要です。

主な計算基準としては、以下の4つがあります。

1.株式価値基準:株式の譲渡価額のみを基準とする
2.オーナー受取額基準:株式価額+役員借入金を基準とする
3.企業価値基準:株式価額+有利子負債-現預金等を基準とする
4.移動総資産基準:株式価額+負債総額を基準とする

どの基準を採用するかによって、成功報酬額が大きく変わります。一般的には、株式価値基準が最も報酬額が低く、移動総資産基準が最も高くなる傾向があります。契約前に、どの基準で報酬が計算されるのかを必ず確認し、契約書に明記してもらいましょう。

中途解約条項を確認する

M&Aアドバイザリー契約を締結する際には、中途解約に関する条項を必ず確認しましょう。契約期間中に、M&Aアドバイザーのサポートに不満がある場合や、M&Aの方針を変更する場合など、契約を解除したいと考える状況が生じる可能性があります。

中途解約条項では、以下の点を確認する必要があります。

1.任意の時点で契約を解除できるか
2.解除する場合の通知期間はどれくらいか
3.解除時に違約金が発生するか
4.解除時にそれまでの報酬をどのように精算するか

特に専任契約の場合、柔軟な中途解約規定がないと、不適切なM&Aアドバイザーと長期間契約し続けることになり、リスクが高まります。契約期間を最長でも6ヶ月から1年程度とし、任意の時点で契約を解除できる条項を設けることが望ましいです。

再委託の可否を確認する

M&Aアドバイザリー契約では、再委託に関する条項も重要です。再委託とは、M&A仲介会社が受託した業務の全部または一部を、第三者に委託することを指します。

M&Aは極めて秘匿性の高い取引であり、依頼者と仲介会社の信頼関係が基礎となります。そのため、法律上も原則として依頼者の承諾を得ずに再委託することはできません。もし、再委託を無制限に認めてしまうと、依頼者の知らないところで外部の会社や個人に業務が委託され、機密情報が漏洩するリスクが高まります。そのため、契約書には「再委託禁止条項」を設けることが望ましいです。

ただし、M&Aのプロセスにおいては、弁護士、税理士、公認会計士などの専門家の関与が必要な場面もあります。そのため、「事前の書面承諾があれば再委託可能」といった例外規定を設けることが一般的です。再委託する場合の条件や、再委託先への秘密保持義務の徹底などについても、契約書に明記しておく必要があります。

信頼できるM&A仲介会社の選び方

M&Aを成功させるために、適切なパートナーを選ぶためのポイントを解説します。

実績と専門性を確認する

M&A仲介会社を選ぶ際には、まず実績と専門性を確認しましょう。具体的には、以下の点をチェックしましょう。

1.これまでの成約実績(件数、規模、業種など)
2.自社の業種や規模に近い案件の経験があるか
3.担当者の経験年数や専門資格(公認会計士、税理士など)の有無
4.中小M&Aガイドラインへの準拠状況
5.M&A支援機関登録制度への登録状況

6.一般社団法人M&A支援機関協会への加入状況

特に、自社の業種や規模に近い案件の経験があるかどうかは重要です。業界特有の商慣習や課題を理解しているM&Aアドバイザーであれば、より適切なサポートを受けられる可能性が高まります。

また、ホームページや資料に掲載されている成功事例も参考になります。ただし、大手であることや成約件数が多いことだけでなく、自社に適したサポートを提供してくれるかどうかを総合的に判断します。

担当者との相性を重視する

M&Aは通常、数ヶ月から1年程度の期間を要します。その間、M&Aアドバイザーと密接にコミュニケーションを取りながら進めていくため、担当者との相性も要素になります。

初回の面談では、以下の点を確認しましょう。

1.自社の話をしっかりと聞いてくれるか
2.質問に対して分かりやすく説明してくれるか
3.誠実で信頼できる印象を受けるか
4.こちらの要望や不安を理解してくれるか
5.レスポンスが早く、迅速に対応してくれるか

M&Aは企業の将来を左右する意思決定です。不安や疑問を率直に相談でき、信頼して任せられる担当者を選ぶことが、M&A成功の鍵となります。

複数社を比較検討する

M&A仲介会社を選ぶ際には、1社だけでなく、複数社を比較検討しましょう。多くのM&A仲介会社では、初回相談を無料で行っているため、複数社に相談して比較することをおすすめします。

比較する際のポイントとしては、以下の点が挙げられます。

1.提供されるサービスの内容と範囲
2.報酬体系と総コストの見積もり
3.実績と専門性
4.担当者の対応と相性
5.契約条件(専任契約の期間、中途解約の可否など)

各社の提案内容を比較し、自社に最も適したM&A仲介会社を選ぶことが重要です。ただし、費用の安さだけで選ぶのではなく、提供されるサービスの質や、担当者との相性も含めて総合的に判断することが大切です。

まとめ

M&Aアドバイザリー契約は、M&Aを成功に導くための第一歩です。この契約を通じて、専門家の知識と経験を活用し、円滑にM&Aを進めることができます。

契約を締結する際には、中小M&Aガイドラインへの準拠、報酬の計算基準、中途解約条項、再委託の可否などを確認することが重要です。また、信頼できるM&A仲介会社を選ぶためには、実績と専門性、担当者との相性、複数社の比較検討が欠かせません。

M&Aは企業の未来を左右する意思決定です。適切なアドバイザリー契約を締結し、信頼できるパートナーとともにM&Aを進めることで、成功への道が開けます。

 

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