IPOを目指す企業必見!IPOの目指し方をスケジュールとあわせて解説

  1. TOP
  2. 用語関連コンテンツ
  3. IPOを目指す企業必見!IPOの目指し方をスケジュールとあわせて解説

IPO(新規株式公開)は、企業の成長戦略における重要な選択肢のひとつです。多くのベンチャー企業や成長企業が上場を目指す背景には、資金調達の多様化や社会的信用の獲得といったメリットがあると考えられます。

しかし、IPO準備には多額の費用と長期間の準備が必要であり、準備を進める中で直面する課題も少なくありません。

本記事では、IPOを目指すべきかどうかの判断基準から、具体的な準備プロセス、成功と失敗を分けるポイントまで、経営者が知っておくべき重要な情報を詳しく解説します。

 IPOを目指す企業が増えている背景

近年、日本国内でIPOを実現する企業の数は増加傾向にあります。

特にベンチャー企業や中小企業において、IPOは成長戦略の重要な選択肢として認識されるようになっています。背景には、資金調達手段の多様化やスタートアップエコシステムの充実、さらには企業価値向上への期待があるといえます。

資金調達手段の多様化とIPOの位置づけ

従来、企業が事業資金を調達する方法は、金融機関からの借入やベンチャーキャピタルからの出資が中心でした。

これらの手段では、調達できる金額に限界があり、大規模な事業展開や研究開発投資には不十分なケースが少なくありません。IPOを実現すれば、証券市場を通じて不特定多数の投資家から資金を調達できるようになり、調達規模は飛躍的に拡大する可能性があります。

近年では、IPOに至るまでの段階的な資金調達手段も充実しており、シリーズAからシリーズB、シリーズCといった段階を経て、最終的にIPOを目指す企業が増えています。このように、IPOは資金調達の最終手段ではなく、成長戦略の中で計画的に位置づけられる選択肢となっているといえます。

社会的信用と知名度向上への期待

IPOを実現することで、企業は「上場企業」というステータスを獲得できます。日本企業全体の中で上場企業が占める割合は0.1%未満であり、上場企業であることは高い社会的信用の証明となる傾向があります。この信用は、取引先との関係構築や新規顧客の開拓において大きなアドバンテージとなる可能性があります。

また、メディアへの露出機会が増え、企業の知名度は向上しやすくなります。知名度の向上は、優秀な人材の採用にもプラスに働くと考えられます。学生や転職希望者にとって、上場企業への就職は一定の安心感とステータスをもたらす傾向があるため、採用活動が効率的に進められるケースが多いです。

経営管理体制の強化と企業価値向上

IPO準備の過程では、内部統制制度の構築やコンプライアンス体制の整備が求められます。これにより、属人的な経営から組織的な経営へと転換が進む可能性があります。

具体的には、会計制度や業務管理制度、利益管理制度などを整備し、適切に運用する仕組みを構築します。これらの取り組みは、企業が将来的に規模を拡大する際の基盤となり、持続的な成長を支える重要な要素となる傾向があります。

経営管理体制が強化されることで、投資家からの信頼も高まりやすく、IPO後の企業価値向上にもつながると考えられます。

IPOを目指すのがおすすめな企業の特徴

すべての企業がIPOを目指すべきとは限りません。IPOに向いている企業には、いくつかの共通した特徴があると考えられます。

自社がこれらの特徴に当てはまるかどうかを確認することで、IPOを目指すべきかどうかの判断材料となります。

継続的な成長が見込める事業モデルがある

IPOを成功させるには、継続的な成長が見込める事業モデルを持っていることが前提といえます。一時的な好業績だけでは、上場審査を通過することは難しく、中長期的に安定した収益を生み出せる事業構造が求められる傾向があります。

市場規模が拡大しているか、競争優位性が確立されているか、収益性が高いかといった点が重要な判断基準となるでしょう。投資家は、将来的な成長性を評価してIPO株を購入する傾向があるため、明確な成長ストーリーを描ける企業が求められます。また、市場環境の変化にも対応できる事業の柔軟性も重要な要素といえます。

調達資金の明確な使途がある

IPOで調達した資金をどのように活用するかが明確であることも重要といえます。新規事業の立ち上げ、設備投資、研究開発、人材採用、M&Aなど、具体的な投資による成長計画が描けている企業は、投資家からの支持を得やすくなる傾向があります。

逆に、資金の使途が曖昧な場合、投資家は企業の成長戦略に疑問を持ち、企業が望む株価での上場が難しくなる可能性があります。

調達資金を活用して、どのように企業価値を高めるのか、具体的な数値目標とともに説明できることが求められるでしょう。資金調達額と投資計画のバランスも重要であり、過大な調達は市場の信頼を損なう可能性があります。

経営管理体制を構築できる組織力がある

IPO準備では、内部統制制度の構築やコンプライアンス体制の整備が求められます。これらを実現するには、一定規模の管理部門と専門人材が必要とされています。

また、経営層がガバナンスの重要性を理解し、組織全体で取り組む姿勢が不可欠といえます。組織力が不足している企業は、IPO準備の過程で大きな困難に直面する可能性があります。

特に、経理・財務部門の体制強化は必須とされており、月次決算の早期化や正確な財務報告ができる体制を整える必要があります。人材が不足している場合は、早期に採用活動を開始するか、外部の専門家を活用することも検討すべきでしょう。

安定した業績と財務基盤がある

IPO審査では、過去2期以上の業績が開示され評価されます。売上高や利益が安定的に成長しているか、収益性が確保されているか、キャッシュフローが健全かといった点が重視される傾向があります。一時的な好業績ではなく、持続可能な収益構造を構築できていることが求められるでしょう。

また、財務基盤の健全性も重要な要素です。過度な借入金がないか、自己資本比率が適切か、運転資金が十分に確保されているかなどがチェックされます。財務基盤が脆弱な企業は、IPO準備の過程で資金繰りに苦しむリスクがあるといわれています。

経営陣がIPOに強いコミットメントを示せる

IPO準備には、長期間にわたる膨大な労力と費用が必要です。そのため、経営陣がIPOに対して強いコミットメントを持っていることが不可欠といえます。事前の検討が不十分な状態やコミットメントが低い状況で意思決定をした結果として途中で方針を変更したり、準備を中断したりすると、それまでの投資が無駄になるだけでなく、社内の士気も低下する可能性があります。経営陣がIPOの意義を深く理解し、困難な状況でも諦めずに準備を進める覚悟が求められるでしょう。

また、IPO後も上場企業としての責任を果たし続ける意識が必要です。

IPOの目指し方(ステップと具体的なスケジュール)

IPO準備には、一般的に3年以上の期間が必要とされています。準備期間は、直前々期以前、直前々期、直前期、申請期の4つの段階に分けられます。各段階で必要な取り組みを計画的に進めることが、IPO成功の鍵となると考えられます。

直前々期以前の準備(N-3期以前)

IPOを目指す意思決定を行い、基本的な準備を開始する段階です。この時期には、まず監査法人の選定と契約を行います。監査法人は、財務諸表の監査や内部統制の構築の助言を行う重要なパートナーとされています。IPO実績が豊富で、自社の業界に精通している監査法人を選ぶことが望ましいといわれています。

なお、監査法人と監査契約を締結するためには、ショートレビュー(IPO課題抽出調査)を受ける必要があります。ショートレビューでは、監査法人が企業の現状を調査し、上場に向けた課題を洗い出します。調査項目には、組織設計、財務、会計、内部統制、法務、税務、人事労務などが含まれます。この調査結果をもとに、優先順位をつけて改善を進めることで、効率的にIPO準備を進められる可能性があります。

また、IPOに向けた社内の意識統一も重要な取り組みです。経営層だけでなく、従業員全体がIPOの意義を理解し、協力する体制を整えることが求められます。

直前々期の体制構築(N-2期)

直前々期では、上場企業と同等の管理体制の整備と運用を開始します。

監査法人によるショートレビューを受け、監査法人に監査に耐えうる企業と判断された際には、監査契約を締結することができます。この段階から、監査法人による監査が始まり、財務諸表の正確性や内部統制の有効性が検証されます。期首残高の確定も重要な作業であり、過去の会計処理に誤りがないか、資産や負債が適切に計上されているかを確認します。

また、主幹事証券会社の選定も行います。主幹事証券会社は、上場準備の指導や株式の引受、上場申請書類の作成支援などを担う重要なパートナーとされています。IPOの主幹事実績が多く、信頼できる証券会社を選定することが重要といえます。

主幹事証券会社を選定、契約が締結できると、主幹事証券会社のサポートを受けながら、本格的な上場準備が始まります。

特に「上場申請のための有価証券報告書(Iの部)」や「上場申請のための有価証券報告書(IIの部)」はボリュームが大きく、計画的に進める必要があるでしょう。内部統制制度の整備も本格化し、業務プロセスの文書化やリスク評価、統制活動の設計などを進めます。

なお、直前々期に取り組むべき基本的な整備項目は共通していますが、上場を目指す市場によって求められる審査水準や提出資料は異なるため、早い段階から自社に合った市場選択を行い、準備内容を調整していくことが必要があります。

直前期の整備と運用(N-1期)

直前期では、整備した管理体制を期首から本格的に運用します。

主幹事証券会社による審査が始まり、上場申請書類のドラフトを完成させます。証券会社からは、事業計画や財務予測、リスク要因などについて詳細な質問が行われ、適切に回答する必要があります。

また、株式事務代行機関の選定と契約も行います。株式事務代行機関は、株主名簿の管理や株主総会の運営支援などを担います。この時期には、監査法人の監査も継続的に行われ、指摘事項への対応が求められます。内部統制制度の運用状況も評価され、不備があれば改善が必要といえます。

資本政策の最終調整も重要な作業です。IPO時の公募株式数や売出株式数、公募価格の想定レンジなどを検討し、投資家に魅力的な条件を設定することが求められます。

申請期の審査対応(N期)

申請期では、証券取引所への上場申請を行い、審査を受けます。

上場申請書類を最終的に完成させ、証券取引所に提出します。審査期間は通常2〜3ヶ月程度とされています。審査担当者からの質問に適切に対応し、必要な資料を迅速に提出することが求められます。

審査では、企業の事業内容、業績、財務状況、経営管理体制、コンプライアンス体制、情報開示体制などが詳細にチェックされます。

また、定款の変更を行い、株式譲渡制限を解除して公開会社となります。株式の公募や売出を行う場合は、有価証券届出書を財務局に提出する必要があります。

審査を無事に通過すると、上場承認が下り、晴れてIPOが実現します。上場日には、株式市場で初めて株式が取引され、初値が形成されます。

時期 主な取り組み
直前々期以前(N-3期以前) IPO意思決定、監査法人選定、ショートレビュー実施
直前々期(N-2期) 管理体制整備開始、監査契約締結、主幹事証券会社選定、申請書類作成開始
直前期(N-1期) 管理体制本格運用、証券会社審査開始、株式事務代行機関選定
申請期(N期) 上場申請、証券取引所審査対応、定款変更、上場承認

IPOを成功させるポイント

IPOを成功させるには、いくつかの重要なポイントがあると考えられます。これらを理解し、適切に対応することが、IPO実現への近道となるでしょう。

好業績を継続的に維持する

IPO審査では、企業が中長期的に成長できる体制を持っているかが確認されます。短期的な成果だけでなく、中長期で安定した事業基盤を築けているかどうかが重要な評価ポイントとなります。

業績が悪化すると、IPO準備を中断せざるを得なくなることもあります。そのため、事業計画を着実に実行し、市場環境の変化にも柔軟に対応できる体制を整えることが重要といえます。

内部管理体制を早期に構築する

IPO準備では、内部統制制度対応やコンプライアンス体制の構築が必須とされています。これらの体制を早期に整備し、運用実績を積み重ねている企業は、上場審査をスムーズに通過できる可能性が高まります。

逆に、直前期になって慌てて整備を始めると、運用が不十分と判断され、上場が延期されるリスクがあるといわれています。内部統制制度の構築には、業務プロセスの文書化、リスク評価、統制活動の設計、モニタリングの実施などが含まれます。これらを計画的に進め、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善することが重要といえます。

また、会計システムの導入も効果的な手段のひとつです。会計処理の自動化や承認フローの可視化により、業務効率が向上し、内部統制の実効性も高まる可能性があります。

スケジュール管理を徹底する

IPO準備は、膨大な業務を計画的に進める必要があります。スケジュール管理が徹底されている企業は、各段階で必要な作業を漏れなく実施し、期限内に完了させることができる傾向があります。進捗を定期的に確認し、遅れが生じた場合には迅速に対応する体制が整っていることが重要といえます。プロジェクト管理ツールの導入や、タスクの優先順位付け、担当者の明確化なども有効な手段とされています。

また、外部パートナーとのコミュニケーションも密に取り、情報共有をスムーズに行うことが求められます。監査法人や証券会社からの指摘事項には迅速に対応し、質問には正確に回答することで、信頼関係を構築できる可能性が高まります。

適切な外部パートナーを選定する

監査法人や証券会社は、IPO準備において最も重要なパートナーとされています。実績や専門性、相性などを総合的に判断し、慎重に選定することが必要といえます。IPO実績が豊富で、自社の業界に精通している専門家を選ぶことで、準備期間の短縮や課題解決の迅速化が期待できます。

また、契約後も定期的にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築することが重要です。さらに、弁護士、税理士、コンサルタントなどの専門家も必要に応じて活用することが有効でしょう。

社内の意識統一と協力体制を構築する

IPO準備は、経営層だけでなく、全社員が協力して進める必要があるとされています。IPOの意義や目的を社員に丁寧に説明し、理解と協力を得ることが不可欠といえます。

また、準備期間中は業務負担が増加するため、社員のモチベーションを維持する工夫も必要でしょう。上場後のビジョンを共有し、全員で目標に向かって取り組む一体感を醸成することが重要です。定期的な説明会や社内報を通じて、IPO準備の進捗状況を共有し、社員の不安や疑問に答える機会を設けることも効果的な手段といえます。IPO準備に関わるメンバーには、適切な評価とインセンティブを提供することで、モチベーションを高めることができる可能性があります。

資本政策を慎重に検討する

資本政策は、IPOに向けた資金調達と株主構成の計画です。誰から、どのタイミングで、どれだけの資金を調達するかを検討します。

また、経営陣や従業員、取引先などの安定株主がどの程度の株式を保有するかも重要な検討事項です。安定株主の比率が高いほど、敵対的買収のリスクを低減できる傾向があります。資本政策は、一度実行すると修正が困難なため、慎重に検討する必要があるといわれています。主幹事証券会社などの専門家と協力しながら、最適な資本政策を策定することが推奨されます。

特に、創業者の持株比率やストックオプションの付与、第三者割当増資のタイミングなどは、IPO後の株価や経営の自由度に大きく影響する可能性があるため、長期的な視点で判断することが求められるでしょう。

まとめ

IPOは、企業の成長戦略における重要な選択肢のひとつであり、資金調達や信用力の向上といった多くのメリットをもたらす可能性があります。

しかし、IPO準備には長期間の時間と多額の費用、そして専門的な知識が必要とされています。本記事で解説したように、IPOを成功させるには、継続的な好業績の維持、内部管理体制の早期構築、スケジュール管理の徹底が不可欠といえます。

また、監査法人や証券会社といった外部パートナーの選定も重要な要素となるでしょう。IPOを目指すかどうかは、自社の事業モデルや成長戦略、組織力を総合的に判断する必要があります。継続的な成長が見込める事業モデルを持ち、調達資金の明確な使途があり、経営管理体制を構築できる組織力がある企業は、IPOに向いている傾向があります。準備期間は一般的に3年以上必要とされており、直前々期以前、直前々期、直前期、申請期の各段階で計画的に取り組みを進めることが求められます。

専門家に無料で相談する サービス一覧を見る

幸せの懸け橋に

〜人と企業を成長へ導く存在であり続ける〜

  • コンサルティング・各種サービスに関するお問い合わせ

  • 無料お見積もりのご相談

お問い合わせ

クッキーポリシー

当社グループでは、お客さまの利便性向上、およびWEBサイトなどの品質維持・向上のために、Cookieを含むアクセスデータを利用しております。
詳細は、当社のクッキーポリシーをご確認ください。