内部監査コンサルタントの選び方とは?適切なパートナーを見つけるポイント

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企業のガバナンス強化やIPO準備において、内部監査体制の構築は重要な経営課題となっています。しかし、社内リソースだけでは専門性の高い内部監査を実施することが難しく、外部コンサルタントの活用を検討される企業が増えています。 

内部監査コンサルタントを選ぶ際には、自社の状況に合った専門性、実績、サービス内容を持つパートナーを見極めることが重要です。本記事では、内部監査コンサルタントの選び方について、8つの重要なポイントを中心に詳しく解説いたします。 

適切なパートナーを選ぶことで、企業価値の向上と持続的な成長につながる内部監査体制を構築しやすくなります。 

内部監査コンサルタントとは?その役割と必要性

内部監査の基本的な役割 

内部監査とは、企業内部の独立した立場から、経営活動全般について検証・評価を行い、改善提案を行う活動です。組織体の経営目標の効果的な達成に役立つことを目的として、合法性と合理性の観点から、ガバナンス・プロセス、リスク・マネジメント、コントロール(内部統制)の有効性を検討・評価し、助言・勧告を行います。 

近年では、コーポレートガバナンス・コードの改訂や「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下「J-SOX実施基準」といいます。)など、規制環境の変化により、内部監査の重要性が一層高まっています。特に上場準備企業や上場企業においては、内部監査体制の整備が求められています。 

内部監査コンサルタントが提供する支援内容

内部監査コンサルタントは、企業の内部監査機能をさまざまな形でサポートします。主な支援内容には以下のようなものがあります。 

内部監査計画の策定支援では、企業のリスク評価に基づいた年間監査計画の立案をサポートします。企業の事業内容や経営環境を深く理解した上で、優先的に監査すべき領域を特定していきます。 

内部監査の実施支援(コソーシング)では、企業の内部監査部門と協働しながら、監査手続の実施から報告書作成まで一連のプロセスをサポートします。社内の担当者と共に作業を進めることで、ノウハウの移転も実現しやすくなります。 

内部監査の実施支援(フルアウトソーシング)では、内部監査業務全般を代行します。専門的な知識を持つ公認会計士等が監査を実施するため、質の高い監査を効率的に行うことが期待できます。 

内部監査体制の構築支援では、内部監査規程の整備、内部監査部門の組織設計など、体制面でのサポートを行います。IPO準備企業には特にニーズの高い支援内容です。 

なぜ企業は外部コンサルを活用するのか

企業が内部監査コンサルタントを活用する背景には、いくつかの理由があります。 

第一に、専門性の確保が挙げられます。内部監査には会計、IT、法務など幅広い専門知識が求められますが、これらを社内でカバーすることは容易ではありません。外部の専門家を活用することで、高度な専門性を持った監査が実現しやすくなります。 

第二に、客観性・独立性の担保です。社内の人間関係や組織文化に影響されない第三者の視点は、より公正な監査の実施に寄与します。特に上場企業や上場準備企業では、この独立性が重視される傾向があります。 

第三に、業務の継続性の確保です。退職・休職などによる業務の継続性リスクを軽減するために、外部リソースを活用することで、安定した監査品質を維持しやすくなります。 

内部監査コンサルタントを活用するメリット

専門的な知識と経験の活用

内部監査コンサルタントを活用する主なメリットは、高度な専門性を持つプロフェッショナルの知見を活用できることです。 

公認会計士、公認内部監査人(CIA)、公認不正検査士(CFE)、公認情報システム監査人(CISA)など、各種専門資格を持つコンサルタントが、それぞれの専門領域で支援を提供します。 

また、内部監査コンサルタントとして多様な業種・規模の企業を支援してきた経験から、ベストプラクティスの提供や他社事例を踏まえたアドバイスを受けることができることも大きな利点です。自社メンバーだけでは気づきにくい課題や改善点を発見し、問題発生前に対策することも期待できます。 
 
大手監査法人系のコンサルティング会社では、グローバル基準の監査手法や最新のフレームワークを活用した支援が期待できます。一方、独立系の専門コンサルティング会社では、特定業種や企業規模に特化した実務的なアプローチが強みとなることがあります。 

客観的な視点による課題発見

外部コンサルタントならではの客観的な視点は、組織内部では見えにくい問題を明らかにします。 

社内の常識や慣習にとらわれず、本当にその業務プロセスが効率的か、リスク管理が適切かといった観点から評価できることは、内部監査の質を向上させる可能性があります。経営陣に対しても独立した立場から提言を行えるため、ガバナンス強化につながります。 

特に、長年同じメンバーで内部監査を実施している企業では、視点が固定化し、新たなリスクを見落とす可能性があります。外部の視点を取り入れることで、盲点を補うことができます。 

内部監査体制の効率的な構築

特にIPO準備企業にとって、限られた時間とリソースの中で内部監査体制を構築することは大きな挑戦です。 

外部コンサルタントを活用することで、規程整備から監査実施まで、体系的かつ効率的に内部監査体制を立ち上げやすくなります。証券取引所の上場審査基準や、監査法人が期待する水準を理解したコンサルタントであれば、的確なアドバイスが期待できます。 

また、監査の実施を通じて社内担当者への知識移転も行うため、将来的には自社で内部監査を実施できる体制づくりにも貢献します。コソーシング方式を採用すれば、外部の専門知識を吸収しながら、段階的に内製化を進めることも可能です。 

コンプライアンス対応の強化

法規制の複雑化に伴い、コンプライアンス対応の重要性が増しています。会社法、金融商品取引法、個人情報保護法など、企業が遵守すべき法令は多岐にわたります。 

内部監査コンサルタントは最新の法規制動向を把握しており、適切なコンプライアンス体制の構築を支援できます。特に2023年に改訂されたJ-SOX実施基準では、不正リスクへの対応やIT統制の重要性が強調されており、専門的な知見がより一層求められています。 

内部監査コンサルタント活用のデメリットと注意点

コストの負担

内部監査コンサルタントの活用には相応のコストが発生します。専門性の高いサービスであるため、企業規模や支援範囲に応じた費用が必要になります。 

特に中小企業やスタートアップ企業にとっては、この費用負担が経営上の大きな判断材料となります。ただし、適切な内部監査体制の構築により、将来的なリスクを回避し、企業価値を向上させることができれば、投資対効果を見込める可能性があります。 

費用対効果を高めるためには、支援範囲を明確にし、本当に外部の専門性が必要な領域に絞って依頼することが重要です。詳しい費用対効果の考え方については、後述の「内部監査コンサルタントのROIと費用対効果」セクションで解説いたします。 

社内ノウハウ蓄積が遅れる懸念とその対策

内部監査のアウトソーシングを検討する際、「社内にノウハウが蓄積されない」という懸念を持つ企業も少なくありません。 

しかし、この考え方は「ノウハウ=特定の人の知識や経験」という属人化を前提としている場合があります。 実際には、適切にアウトソーシングを活用すれば、監査規程、チェックリスト、監査調書のフォーマット、リスク評価シート、監査報告書のテンプレートなど、仕組みや成果物という形でノウハウを社内に蓄積することが可能です。 

これらの文書化された資産は、特定の担当者が退職しても組織に残り続けます。  

属人的なノウハウに依存する体制では、担当者の異動や退職によって監査の質が大きく変動するリスクがあります。一方、外部コンサルタントとの協働を通じて標準化された仕組みを構築すれば、持続可能な内部監査体制を確立しやすくなります。  

特にコソーシング方式を採用し、社内担当者と外部コンサルタントが協働する形で監査を実施すれば、実務を通じた知識移転と同時に、体系的な監査の仕組みを社内に定着させることができます。このアプローチにより、人に依存しない、組織としてのノウハウ蓄積が実現します。 

情報セキュリティとプライバシーへの配慮

内部監査では企業の機密情報を扱うため、情報セキュリティの確保は極めて重要です。 

外部コンサルタントに情報を開示する際には、秘密保持契約の締結はもちろん、コンサルタント側の情報管理体制を十分に確認する必要があります。特に財務情報、人事情報、技術情報など、重要性の高い情報を扱う場合には、より慎重な対応が求められます。 

大手コンサルティング会社や上場企業であれば、一般的に厳格な情報管理体制を整えていることが期待できますが、契約前に具体的な管理方法を確認することが賢明です。 

コンサルタントとの相性・コミュニケーション

どれだけ優れたコンサルタントであっても、企業文化や経営方針との相性が合わなければ、効果的な支援は難しくなる場合があります。 

コンサルタントの提案が実務とかけ離れていたり、コミュニケーションがスムーズに取れなかったりすると、かえって業務の負担が増える可能性もあります。 

特に、大手監査法人系のコンサルタントは理論的・体系的なアプローチを得意とする一方、実務への落とし込みに時間がかかる場合があります。逆に、中小のコンサルティング会社は実務重視で柔軟な対応が期待できる一方、リソースが限られる場合もあります。自社のニーズに合ったタイプのコンサルタントを選ぶことが重要です。 

内部監査コンサルタントの選び方|8つの重要ポイント

ポイント1:企業規模や業種への対応実績

内部監査コンサルタントを選ぶ際、まず確認すべきは自社の規模や業種に対する支援実績です。 

企業規模によって内部監査で重視すべきポイントは異なります。スタートアップや中小企業では限られたリソースで効率的に監査体制を構築することが求められますし、大企業では複雑な組織構造やグローバル展開に対応した監査が必要になります。 

また、業種特有のリスクや規制への理解も重要です。製造業、IT業、金融業、小売業など、それぞれの業界には固有の商慣習やリスクがあり、業種経験のあるコンサルタントの方が的確な支援を提供しやすい傾向があります。 

コンサルティング会社のウェブサイトや提案資料で、類似業種・類似規模の支援実績を確認しましょう。可能であれば、具体的な事例や成果について質問することも有効です。 

ポイント2:専門資格と実務経験の確認

内部監査コンサルタントの専門性を見極めるには、保有資格と実務経験の確認が欠かせません。 

公認会計士(CPA)は、会計・監査の専門家として信頼性の高い資格です。財務報告に関わる内部統制の評価やJ-SOX対応では、公認会計士の知見が特に有効です。 

公認内部監査人(CIA)は、内部監査の国際的な専門資格であり、内部監査の実務に精通していることを示します。 

公認不正検査士(CFE)は、不正の予防・発見に関する専門知識を持つ資格で、不正リスク対応において強みを発揮します。 

公認情報システム監査人(CISA)は、IT監査の専門資格であり、システム統制の評価に必要な知識を持っています。 

資格だけでなく、実際の監査経験年数や、監査法人での勤務経験なども重要な判断材料です。特に、上場企業や上場準備企業の監査経験があるコンサルタントは、証券取引所や監査法人の期待水準を理解している可能性が高いでしょう。 

ポイント3:提案内容の具体性と実現可能性 

コンサルタント選定の際には、提案内容が具体的で実現可能なものかを見極めることが重要です。 

理想論や一般論だけでなく、自社の現状を踏まえた実践的な提案ができるかどうかを確認しましょう。初回の打ち合わせや提案書の段階で、企業の課題をどれだけ深く理解しているか、具体的な解決策を示せているかが判断材料になります。 

また、提案されたスケジュールや必要なリソースが現実的かどうかも重要です。短期間で無理なスケジュールを提示したり、過度に大規模な体制を提案したりするコンサルタントには注意が必要です。 

良い提案書には、以下の要素が含まれているべきです: 

  • 現状分析と課題の特定 
  • 具体的な支援内容とアプローチ 
  • 明確なスケジュールとマイルストーン 
  • 期待される成果物 
  • 費用の内訳 

ポイント4:コミュニケーション能力と相性

内部監査コンサルタントとは定期的にコミュニケーションを取ることになるため、円滑なやり取りができるかどうかは非常に重要です。 

専門用語を多用せず、経営陣や現場担当者にも分かりやすく説明できるコミュニケーション能力が求められます。また、問題点を指摘するだけでなく、建設的な改善提案ができること、現場の状況や意見を丁寧に聞く姿勢を持つことも大切です。 

企業文化や価値観への理解も重要な要素です。堅実な経営を重視する企業と、スピード重視のスタートアップでは、求められるコンサルタントのスタイルも異なります。 

初回の打ち合わせで、以下の点を確認するとよいでしょう: 

  • 質問への回答が明確で分かりやすいか 
  • 自社の業界や事業内容への理解が深いか 
  • 一方的な提案ではなく、対話を重視する姿勢があるか 
  • レスポンスの速さや連絡の取りやすさ 

ポイント5:費用の透明性とコストパフォーマンス

費用面での透明性は、信頼できるコンサルタントを選ぶ上で欠かせません。 

料金体系が明確で、何にいくらかかるのかが分かりやすく説明されているかを確認しましょう。時間単価制、月額固定制、プロジェクト単価制など、料金体系はさまざまですが、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自社に合った方式を選ぶことが大切です。 

また、追加費用が発生する条件についても事前に確認しておくべきです。スコープ変更時の対応、想定以上の作業が発生した場合の扱いなど、契約時に明確にしておくことでトラブルを避けやすくなります。 

費用の安さだけで選ぶのではなく、提供されるサービスの質と費用のバランスを総合的に判断することが重要です。大手コンサルティング会社は費用が高い傾向がありますが、豊富なリソースと体系的な手法が期待できます。一方、中小のコンサルティング会社は比較的リーズナブルな価格設定で、柔軟な対応が期待できる場合があります。 

ポイント6:アフターフォロー体制

内部監査は一度実施して終わりではなく、継続的な改善が必要です。そのため、プロジェクト終了後のフォロー体制も選定時の重要なポイントです。 

監査実施後の改善提案のフォローアップ、次回監査に向けたアドバイス、規制変更時の情報提供など、継続的なサポートが受けられるかを確認しましょう。また、緊急時の相談対応や、追加支援が必要になった際の対応体制も重要です。 

長期的なパートナーシップを前提とするのであれば、単発のプロジェクトだけでなく、継続的な関係構築が可能かどうかも確認しておくとよいでしょう。 

ポイント7:最新の法規制や監査手法への対応 

内部監査を取り巻く環境は常に変化しています。法規制の改正、新しい監査手法の登場、テクノロジーの進化など、最新動向への対応力も重要な選定基準です。 

特に2023年のJ-SOX実施基準改訂では、不正リスクへの対応やIT統制の評価が強化されました。こうした最新の要求事項に対応できる知見を持つコンサルタントを選ぶことが大切です。 

また、データ分析ツールやAI技術を活用した監査手法など、効率的な監査を実現する新しいアプローチについても理解があるかを確認しましょう。 

コンサルティング会社が定期的にセミナーを開催していたり、業界誌に寄稿していたりする場合、最新動向への関心が高く、知識のアップデートに積極的であることの指標となります。 

ポイント8:契約条件と柔軟性

契約の柔軟性も、長期的なパートナーシップを築く上で重要です。 

企業の状況は変化するため、支援内容や契約期間を柔軟に調整できるかを確認しましょう。短期契約から始めて、満足度を確認した上で長期契約に移行できるような段階的なアプローチが可能かも検討ポイントです。 

また、契約解除条件や、プロジェクト途中での変更対応なども事前に確認しておくことで、安心して依頼しやすくなります。 

契約書の内容を十分に理解し、不明点があれば契約前に必ず確認することが重要です。特に、以下の点は明確にしておくべきです。 

  • 業務範囲と責任の所在 
  • 成果物の定義と納期 
  • 費用の支払い条件 
  • 機密保持義務 
  • 契約期間と更新・解除の条件

内部監査コンサルタントのROIと費用対効果 

内部監査コンサルタントの活用を検討する際、単純な費用相場ではなく、投資対効果(ROI)の観点から判断することが重要です。ここでは、フルアウトソーシング、コソーシング、内製化それぞれの費用構造と期待できる効果を比較します。 

内製化のコストと課題

内部監査を内製化する場合、以下のようなコストが発生します。 

人件費 
内部監査担当者の年間人件費は、経験や役職により異なりますが、専任担当者1名あたり年間500万円〜1,000万円程度が目安です。複数名の体制が必要な場合、この数倍のコストがかかります。 

採用・育成コスト 
適切な専門性を持つ人材の採用には、採用コスト(数十万円〜数百万円)に加え、育成期間中の生産性低下も考慮する必要があります。内部監査の専門家を一人前に育てるには、通常23年の期間が必要です。 

退職・休職リスク 
担当者が退職や休職した場合、業務が停滞するリスクがあります。後任の採用・育成期間中は、監査品質が低下したり、監査計画の遅延が生じたりする可能性があります。 

専門性の限界 
社内人材だけでは、会計・IT・法務など幅広い領域をカバーすることが困難です。特定の専門領域については、結局外部専門家への相談が必要になることがあります。 

客観性の課題 
社内の人間関係や組織文化の影響を受け、真に独立した監査が難しい場合があります。特に経営陣への提言を行う際に、忖度が生じるリスクがあります。 

フルアウトソーシングのコストとメリット 

内部監査を外部に委託する場合の費用構造と効果です。 

コスト構造 
フルアウトソーシングの費用は、企業規模や監査範囲により大きく異なります。 

期待できるメリット 

  • 即戦力の確保:採用・育成期間なしに、経験豊富な専門家による質の高い監査を即座に実施できます 
  • リスクヘッジ:担当者の退職・休職リスクから解放され、安定的に監査を実施しやすくなります 
  • 高い専門性:公認会計士などの専門家が最新の知識と豊富な経験を持って監査を実施します 
  • 客観性の確保:第三者としての独立した視点から、忖度のない評価と提言を行えます 

ROIの考え方 

フルアウトソーシングにより、内部統制の脆弱性を早期に発見し、重大なコンプライアンス違反や不正を未然に防ぐことができれば、その経済的価値は大きくなる可能性があります。例えば、上場廃止リスクの回避、監査法人からの指摘事項の削減、不正による損失の防止などは、フルアウトソーシング費用を上回る価値を生む可能性があります。 

コソーシング(協働型)のコストとメリット 

社内担当者と外部コンサルタントが協働するコソーシング方式は、両者の良いところを組み合わせたアプローチです。 

期待できるメリット 

  • ノウハウの蓄積:外部コンサルタントと協働することで、社内担当者が実践的なスキルを習得でき、将来的な内製化への道筋をつけやすくなります 
  • 効率性の向上:定型的な作業は社内で行い、専門的な判断や複雑な分析は外部専門家が担うことで、効率的な監査を実現しやすくなります 
  • 柔軟な対応:企業の成長や変化に応じて、外部リソースの投入量を調整できます 
  • 品質と独立性の両立:社内の実情を理解した監査を行いつつ、外部の客観的な視点も取り入れられます 

ROIの考え方 
コソーシングは、短期的なコストは内製化より高くなる可能性がありますが、監査品質の向上と社内人材の育成という両面で価値を生み出します。特にIPO準備企業や成長企業にとっては、将来の内製化を見据えた投資として、高いROIが期待できる可能性があります。 

3つのアプローチの比較表 

項目 内製化 コソーシング フルアウトソーシング
初期投資 高い(採用・育成) 中程度 低い
立ち上げ期間 長い(1〜2年) 短い(数ヶ月) 非常に短い(即時)
専門性 限定的 高い 非常に高い
客観性・独立性 低い 中〜高 非常に高い
ノウハウ蓄積 高い 中〜高 仕組みに蓄積
柔軟性 低い 高い 非常に高い
退職リスク 高い なし
適している企業 大企業、監査体制が成熟した企業 IPO準備企業、成長企業 中小企業、リソース不足企業

費用対効果を最大化するポイント

どのアプローチを選択する場合でも、以下のポイントを意識することで費用対効果を高めやすくなります。 

段階的なアプローチ 
最初はフルアウトソーシングで始め、社内の理解が深まったらコソーシングに移行し、最終的には内製化を目指すという段階的なアプローチが効果的です。企業の成熟度に応じて、柔軟に方式を変更することを検討しましょう。 

重点領域の絞り込み 
監査項目を同じレベルで実施するのではなく、リスクの高い領域に重点的にリソースを配分することで、効率的な監査を実現しやすくなります。リスクアプローチを採用し、限られたリソースを最大限に活用しましょう。 

テクノロジーの活用 
監査支援ツールやデータ分析技術を活用することで、作業効率を向上させることが期待できます。コンサルタントがこうしたツールの活用に精通しているかも確認ポイントです。 

継続的な改善 
監査を実施して終わりではなく、指摘事項のフォローアップや監査手法の改善を継続的に行うことで、長期的な価値を生み出します。PDCAサイクルを回し、監査の質を継続的に向上させましょう。 

 内部監査コンサルタントの活用をおすすめする企業 

IPO準備企業 

IPO(新規株式公開)を目指す企業にとって、内部監査体制の整備は重要な要件です。 

証券取引所の上場審査では、適切な内部管理体制が構築されているかが厳しくチェックされます。内部監査部門の独立性、監査計画の妥当性、監査の実効性などが評価されるため、専門家の支援を受けながら体制を構築することが望ましいと言えます。 

IPO支援に実績のあるコンサルティング会社は、証券取引所の審査基準や監査法人の期待水準を踏まえ、効率的に上場準備を進めるうえで心強いパートナーになり得ます。 

急成長中の企業

事業が急拡大している企業では、組織体制や業務プロセスの整備が追いつかず、内部統制に脆弱性が生じることがあります。 

売上や人員が急増すると、それまで機能していた管理体制では対応しきれなくなる場合があります。内部監査を通じて、成長に伴うリスクを早期に発見し、適切な対応を取ることが重要です。 

また、M&Aや新規事業への進出など、新しい領域に挑戦する際にも、内部監査の専門家によるリスク評価や統制の整備支援が有効です。 

急成長企業は変化のスピードが速いため、柔軟に対応できるコンサルタントを選ぶことが重要です。 

内部監査で指摘事項が多い企業 

過去の内部監査や外部監査で多くの指摘事項が発見されている企業は、内部統制に課題を抱えている可能性があります。 

このような企業には、客観的な第三者の視点で根本的な課題を特定し、実効性のある改善策を提案できる外部コンサルタントの活用が効果的です。特に、同じような課題を抱える企業を支援した経験のあるコンサルタントであれば、的確なソリューションを提供できる可能性が高まります。 

部監査リソースが不足している企業 

社内に内部監査の専任担当者を配置できない、あるいは専門知識を持つ人材が不足している企業は少なくありません。 

中小企業では、内部監査専任の担当者を置くことが難しく、他の業務と兼務せざるを得ない場合が多いでしょう。しかし、兼務では十分な監査時間を確保できず、監査の質が低下する懸念があります。 

また、内部監査には会計、IT、法務など幅広い専門知識が求められますが、これらの領域に精通した人材を社内で確保することは容易ではありません。 

このような企業にとって、外部コンサルタントの活用は現実的な解決策です。必要な時に必要な専門性を持つコンサルタントを活用することで、質の高い内部監査を効率的に実施しやすくなります。 

内部監査コンサルタントの探し方と選定プロセス 

コンサルティング会社の探し方

内部監査コンサルタントを探す方法はいくつかあります。 

インターネット検索は最も手軽な方法です。「内部監査 コンサルティング」などのキーワードで検索すれば、多くのコンサルティング会社が見つかります。各社のウェブサイトでサービス内容や実績を確認できます。 

業界団体や専門家の紹介も有効です。日本内部監査協会などの業界団体では、内部監査の専門家とのネットワークがあります。また、顧問税理士や監査法人からの紹介も信頼性の高い情報源です。 

セミナーやイベントへの参加を通じて、コンサルタントと直接知り合う機会もあります。内部監査に関するセミナーでは、講師として登壇しているコンサルタントと接点を持てることがあります。 

既に取引のあるコンサルティング会社への相談も一つの方法です。他の分野でコンサルティングを受けている場合、その会社が内部監査サービスも提供しているか確認してみましょう。 

主なコンサルティング会社のタイプとしては、以下のようなものがあります: 

  • 大手監査法人系PwC、デロイト、KPMGEYなどのグローバルファームの日本法人 
  • 独立系コンサルティング会社:内部監査や経営管理に特化した専門会社 
  • 会計事務所:税理士法人や会計事務所が提供する内部監査サービス 

初回相談で確認すべきこと 

初回の相談では、以下のポイントを確認しましょう。 

自社の状況の説明を丁寧に行い、コンサルタントがどの程度理解してくれるかを見極めます。業種や規模、現在の課題、今後の目標などを共有し、適切な質問や提案が返ってくるかを確認しましょう。 

具体的な支援内容と進め方について質問します。どのような手順で内部監査を進めるのか、どのような成果物が得られるのか、具体的な説明を求めましょう。 

費用の目安も初回相談で確認すべき重要事項です。料金体系や概算金額、追加費用の可能性などについて、明確な説明を求めましょう。 

担当コンサルタントの経験・資格を確認します。どのような実績を持つコンサルタントが担当するのか、具体的に聞いてみましょう。 

相性の確認も忘れずに。専門性だけでなく、コミュニケーションが円滑に取れそうか、信頼できそうかといった感覚的な部分も大切です。 

提案書の評価ポイント

複数のコンサルティング会社から提案を受けた場合、以下の観点で評価しましょう。 

課題の理解度:自社の状況や課題を正確に理解した上での提案になっているかを確認します。一般論ではなく、自社固有の状況に即した内容かがポイントです。 

アプローチの妥当性:提案されている監査手法やスケジュールが現実的で、自社の状況に適しているかを評価します。 

具体性:抽象的な表現ではなく、具体的な作業内容、成果物、スケジュールが示されているかを確認します。 

費用の明確性:費用の内訳が明確で、何にいくらかかるのかが分かりやすく説明されているかをチェックします。 

実績の関連性:自社と類似した規模・業種での支援実績があるかを確認します。単に実績の数だけでなく、質的な関連性も重要です。 

契約前の最終チェックリスト 

契約を結ぶ前に、以下の項目を最終確認しましょう。 

  • 契約内容(業務範囲、期間、費用、成果物の内容とその権利の帰属)が明確に文書化されているか 
  • 機密保持契約が適切に締結されているか 
  • 追加費用が発生する条件が明記されているか 
  • 契約解除の条件や手続きが明確に定められているか 
  • 担当コンサルタントの変更時の対応が定められているか 
  • 定期的な報告やコミュニケーションの方法が合意されているか 
  • トラブル発生時の対応内容とその手順が明確定められているか 

これらの点を確認し、疑問点があれば契約前に営業担当に確認するなどして解消しておくことが大切です。 

内部監査支援の実践例:ブリッジコンサルティンググループの場合

ここでは、実際の内部監査コンサルティング会社の支援内容について、ブリッジコンサルティンググループの例を参考にご紹介します。 

手を動かす実務支援の重要性 

ブリッジコンサルティンググループでは、単なるアドバイスにとどまらず、実際に手を動かす実務支援を重視しています。 

内部監査計画の策定から、実際の監査手続の実施、監査報告書の作成まで、一連のプロセスを社内担当者と協働で進めます。このアプローチにより、社内担当者は実践を通じて内部監査のスキルを習得でき、段階的な内製化が実現しやすくなります。 

経験豊富な人材による支援 

ブリッジコンサルティンググループでは、監査法人出身の公認会計士や、事業会社で内部監査の実務経験を積んだプロフェッショナルが支援を担当します。 

理論だけでなく、実務経験に基づいた現実的なアドバイスができることが強みです。特にIPO準備企業に対しては、上場審査のポイントを熟知した専門家が、審査を見据えた実践的な支援を提供します。 

段階的な支援アプローチ 

ブリッジコンサルティンググループでは、企業の状況に応じて、段階的な支援アプローチを採用しています。 

1段階:体制構築フェーズでは、内部監査規程の整備、年間監査計画の策定、監査調書のフォーマット作成などの基盤整備を行います。 

2段階:実施支援フェーズでは、コソーシング方式で監査を実施し、社内担当者と協働しながら実務を進めます。 

3段階:内製化移行フェーズでは、社内担当者が主体となり、外部コンサルタントはレビューやアドバイスに専念します。 

このように、企業の成長段階に合わせて支援内容を柔軟に調整することで、効率的な内製化を実現します。 

全国対応と品質の均一性 

ブリッジコンサルティンググループでは、東京、大阪、名古屋、福岡など、全国の主要都市に拠点を持ち、全国の企業に対して均一な品質の支援を提供できるよう体制を整えています。 

地方の企業でも、都市部と同水準の専門的な内部監査支援を受けられる体制を構築しており、複数拠点を持つ企業に対しても効率的な監査支援が可能です。  

まとめ | 適切な内部監査コンサルタント選びで企業価値を高める 

内部監査コンサルタントの選択は、企業のガバナンス強化と持続的な成長に大きく影響する重要な意思決定です。 

本記事でご紹介した8つのポイント 

  1. 企業規模や業種への対応実績
  2. 専門資格と実務経験
  3. 提案内容の具体性
  4. コミュニケーション能力
  5. 費用の透明性
  6. アフターフォロー体制
  7. 最新の法規制や監査手法への対応
  8. 契約の柔軟性 

を総合的に評価し、自社に最適なパートナーを選ぶことが大切です。 

特にIPO準備企業や急成長企業、内部監査リソースが不足している企業にとって、外部の専門家を活用することは、効率的かつ効果的に内部監査体制を構築する有効な手段となります。 

費用面での懸念はあるかもしれませんが、ROIの観点から考えると、適切な内部監査により将来的なリスクを回避し、企業価値を向上させることができれば、投資対効果を見込める可能性があります。アウトソーシング、コソーシング、内製化それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に最適なアプローチを選択することが重要です。 

内部監査コンサルタントの選定は、単なるコスト削減や業務効率化だけでなく、企業の持続的な成長を支える重要な戦略的意思決定です。 

本記事で紹介したポイントを参考に複数の会社から提案を受け、比較検討することをおすすめします。大手監査法人系のコンサルティングファーム、独立系の専門コンサルティング会社など、様々な選択肢があります。それぞれの特徴を理解し、自社のニーズに最も合ったコンサルタントを選定してください。  

監修者
監修者
田中智行
取締役COO / コンサルティング事業本部 本部長

上智大学文学部史学科を卒業後、2004年に公認会計士試験合格。

中央青山監査法人(のち、みすず監査法人)、あらた監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)、株式会社オーナーズブレイン、有限責任監査法人トーマツを経て、2012年に独立。

2015年4月から当社提携パートナー会計士として活動している中で、散在している公認会計士の経験・知見・想いを集約し最適配分することにより1社でも多くの企業を支援するビジネスモデルに魅力を感じ、同年9月に1人目の社員として当社に入社。

現在は事業部門の責任者として事業全体を管掌。

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